1972年 シャトー・オー・バタイエ 赤ワイン















1972年のボルドーは、冷涼で日照量に恵まれない厳しい年であった。多くのシャトーが苦戦したが、丁寧な選果と熟達した醸造を行った造り手は、結果として骨格の引き締まったワインを生み出した。とりわけポイヤック地区の優れた畑では、半世紀を経た現在、その時代特有の落ち着いた個性を花開かせている。
シャトー・オー・バタイエ
シャトー・オー・バタイエ(Chateau Haut-Batailley)は、ボルドー・ポイヤック村の南端、シャトー・グラン・ピュイ・ラコストやシャトー・バタイエに隣接する1855年メドック格付け第5級のシャトーである。生産規模は決して大きくなく、ポイヤックの中でもひときわ控えめな存在ながら、その品質は格付け第5級の枠を超えるものとして長く愛好家の間で評価されてきた。隣接する第2級シャトー・ピション・ラランドにも近い好立地を持ち、「リトル・ピション」と評されることもある。シャトーの歴史は19世紀以前のシャトー・バタイエに遡る。1932年、ボルドーの有力商人マルセル・ボリ(Marcel Borie)がシャトー・バタイエを取得し、ボリ家の管理下に置いた。1942年、家族間の継承を経てバタイエは二つに分割されることとなり、北側の主要部分は親族のキャステジャ家(Casteja)に残り、シャトー・バタイエの名を継承する一方、南側の畑とシャトー・オー・バタイエの名はボリ家直系の系譜に分かれた。同じ「バタイエ」の名を持つ二つのシャトーは、こうして1942年を境にそれぞれ独自の道を歩むこととなった。その後、オー・バタイエはマルセル・ボリの娘婿フランソワ・ボリ(Francois Borie)の家系に受け継がれ、その息子ジャン=ウジェーヌ・ボリ(Jean-Eugene Borie)の手によって運営されることとなる。ジャン=ウジェーヌは20世紀後半のボルドーを代表する偉大な醸造家であり、彼が取り組んだシャトー・デュクリュ・ボーカイユ(サン・ジュリアン格付け第2級)の品質革命は、メドック全体の醸造水準を引き上げる契機となったと評される人物である。1972年当時のオー・バタイエはまさにこのジャン=ウジェーヌ・ボリのもとで、デュクリュ・ボーカイユと志を共にする丁寧な造りが行われていた時代であった。1998年のジャン=ウジェーヌ没後は息子のフランソワ=グザヴィエ・ボリが管理を引き継ぎ、シャトー・グラン・ピュイ・ラコストとともに第二世代のボリ家による品質追求が続けられた。2017年には経営を一族外へと譲り、シャトー・ランシュ・バージュを所有するカズ家(Cazes)が新たな所有者となって、現在に至っている。畑は約22ヘクタールに及び、ポイヤック南西部のグラヴ(砂利)と粘土が混じり合う緩やかな丘陵地に広がる。隣接するシャトー・グラン・ピュイ・ラコストやバタイエと連続するテロワールを共有しながらも、メルローの比率がやや高めに設定されている点がオー・バタイエの個性を際立たせている。植栽はカベルネ・ソーヴィニヨンが主体(約60パーセント前後)で、メルロー(約30から40パーセント)、補助としてカベルネ・フランが少量加わる構成である。この比較的高いメルロー比率が、オー・バタイエにポイヤックでは珍しい柔らかさと優美さを与え、骨太な力強さを身上とする他のポイヤック格付けシャトーとは一線を画す独自のスタイルを生み出している。醸造はフレンチオーク樽による伝統的な熟成(樽熟成16から18ヶ月、新樽比率は概ね50から60パーセント)を基本としつつ、近代的な選果と区画別醸造を組み合わせる現代的アプローチが採られてきた。セカンドワインには「ラ・トゥール・オー・バタイエ」(La Tour Haut-Batailley)を擁し、グランヴァンの精神を受け継ぐ親しみやすいワインを生み出している。
味わいの特徴
カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、メルロー、カベルネ・フランを織り交ぜるクラシックなポイヤックブレンド。54年の熟成を経た現在、若い頃に支配的だったタンニンは完全に絹のような質感へと変化している。グラスからはドライカシス、ドライプラム、シダー、なめし革、葉巻の葉、そしてポイヤック古酒特有のミネラル感が立ちのぼる。果実味は枯れた風情を纏い、酸が骨格を静かに支え、余韻には乾いた花とトリュフの繊細な調和が長く残る。
1972年という時代
1972年は昭和47年。日本では2月に札幌冬季オリンピック、5月の沖縄日本復帰、9月の日中国交正常化と、戦後史に刻まれる出来事が連なる年である。世界ではニクソン米大統領が初訪中を果たし、東西冷戦の緊張に変化が訪れた時代でもある。54年の時を経たこの一本は、グラスの中にその時代の空気の重みを静かに伝えてくれる。
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彼にはじめての誕生日プレゼントだったのでずっと悩んでいたのですが、ワイン大好きな彼にピッタリだと思い生まれた年の1971年のワインを選びました。すごく感激してくれた彼。ワインにしてよかったです。
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