2005年 シャペル・ド・オーゾンヌ 赤ワイン















2005年のボルドーは、21世紀を代表する世紀の傑作ヴィンテージのひとつとして広く評価されている。春から夏にかけて温暖で乾燥した安定した天候が続き、収穫期の9月から10月にかけても理想的な好天が保たれた。葡萄は完璧な成熟と凝縮を実現し、極めて凝縮感が高く、酸とタンニンの骨格にも恵まれた長期熟成型の傑作が次々と生まれた。左岸メドック、右岸サン・テミリオン・ポムロールを問わず例外なく卓越し、近代ボルドーの頂点を示すヴィンテージとして2000年、2009年、2010年と並び称されている。本品はその2005年の右岸最高峰オーゾンヌが手掛けるセカンドワインで、20年の熟成を経て今こそ真の飲み頃に達しつつある名品である。
シャペル・ド・オーゾンヌとシャトー・オーゾンヌ
シャペル・ド・オーゾンヌ(Chapelle d'Ausone)は、ボルドー右岸サン・テミリオン地区の最高峰シャトー・オーゾンヌ(Chateau Ausone)が手掛けるセカンドワインである。オーゾンヌはサン・テミリオン格付けで最上位「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ A(Premier Grand Cru Classe A)」に列せられる、シャトー・シュヴァル・ブラン(Cheval Blanc)と並ぶサン・テミリオンの頂点に立つシャトーである。本セカンドワインは1995年以降、オーゾンヌの厳格な選別の過程でグランヴァンに採用されなかった若樹区画の葡萄や、グランヴァンの基準に達しなかったロットから造られる。極めて少量しか生産されず、年間生産量はおおむね4,000本前後とされ、オーゾンヌ本体の希少性に劣らぬほどの入手難度を誇る。「シャペル(chapelle、礼拝堂)」の名は、シャトー敷地内に残る中世以来の小さな礼拝堂に由来し、グランヴァンへの敬意を込めて名付けられたものである。
シャトー・オーゾンヌの起源は、4世紀のローマ帝国時代の詩人にして政治家、ボルドー出身のデキミウス・マグヌス・アウソニウス(Decimus Magnus Ausonius)が当地に葡萄畑を所有していたとの伝説に遡る。「オーゾンヌ」の名はこのアウソニウスへのオマージュであり、千数百年にわたる葡萄栽培の歴史を今に伝える聖地的存在である。1855年の最初のサン・テミリオン格付け制定以来、シャトー・シュヴァル・ブランと共にプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAの座を守り続けてきた歴史的シャトーで、現行制度(2022年改訂)ではシャトー・パヴィ(Pavie)、シャトー・フィジャック(Figeac)もこれに加わっている。近隣には他にも、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに位置するシャトー・カノン(Canon)、シャトー・ベレール・モナンジュ(Belair-Monange)、シャトー・パヴィ・マカン(Pavie Macquin)、シャトー・トロロン・モンド(Troplong Mondot)、シャトー・クロ・フルテ(Clos Fourtet)など、サン・テミリオンを代表する名門が肩を並べる。
サン・テミリオン地区は、ボルドー右岸ドルドーニュ河沿いに広がる中世以来のワイン産地で、村全体がユネスコ世界遺産に登録された景観文化を擁する。オーゾンヌが立つ場所は、サン・テミリオン村の南、急峻な石灰岩の崖(コート)に張り付くように広がる傾斜地で、村全体を見渡せる眺望と、地下に広がるアステリ石灰岩(calcaire a asteries)の岩盤をくり抜いた天然の熟成セラーを有する。南南東向きの急斜面と石灰岩の岩盤、その上を覆う薄い粘土・石灰質の表土という、サン・テミリオン随一の希有なテロワールを誇る。
シャトー・オーゾンヌは19世紀以来ヴォーティエ家(Vauthier)が所有・運営しており、現在は1995年から運営にあたるアラン・ヴォーティエ(Alain Vauthier)と妹のキャサリーヌ(Catherine)、そしてアランの娘ポーリーヌ(Pauline)の三人が一族で守り続けている。1990年代半ば以前のオーゾンヌは長らく古典的で控えめな造りに留まっていたが、アランが運営の指揮を執って以降は厳格な選別と最新の醸造技術の導入によって完全に再生され、世界中の愛好家から崇拝される最高峰の地位を確立した。本ヴィンテージ2005年は、まさにアラン・ヴォーティエの黄金期、サン・テミリオン格付けで「シャトー・パヴィ、シャトー・アンジェリュス」と並んでオーゾンヌの存在感が再び輝きを増した時代の作品である。
畑面積はオーゾンヌ全体でおおむね7ヘクタールという極めて小規模なドメーヌで、サン・テミリオンの最上位シャトーの中で最も限られた区画から極めて少量のワインが生み出される。シャペル・ド・オーゾンヌに供される葡萄は、その中でも若樹あるいはグランヴァンの厳格な選別から外れたロットで、品種構成はメルロー約50%、カベルネ・フラン約50%という、グランヴァンよりもややメルロー比率の高い構成とされる。醸造はオーゾンヌ本体と同じ醸造所、同じスタッフ、同じ哲学のもとで行われ、樽熟成は18ヶ月前後、新樽比率はおおむね80~100%で運用される。セカンドワインとはいえ、他の多くのプルミエ・グラン・クリュ・クラッセのグランヴァンを上回る品質と長期熟成能力を備えた、サン・テミリオン格付け最高峰のセカンドラベルの代表である。
味わいの特徴
メルローとカベルネ・フランをほぼ半々でブレンド。20年の熟成を経た現在、若い頃のブラックチェリー、プラム、ブルーベリーの濃密な果実味は深い二次・三次アロマへと変容し、スミレ、シダー、トリュフ、なめし革、ダークチョコレート、葉巻、紅茶、湿った腐葉土、エスプレッソ、ドライフラワーが層をなして立ち上る。色調は深く濃密なガーネット色を保ち、グラスのエッジには若々しい紫の縁取りがまだ見える。タンニンは緻密でありながら絹のように溶け込み、口中に圧倒的な凝縮感とエレガンスを同時にもたらす。オーゾンヌ特有の石灰岩台地由来の透徹したミネラルが背骨を通し、2005年という偉大なヴィンテージの凝縮感がカベルネ・フランの香り高さとメルローの豊かな果実味と完璧な調和を見せる。余韻は驚くほど長く、まだまだ眠れる潜在力を内に秘めた壮大な構造を保ち、二十年後もなお進化を続けるであろう完成度を誇る。
2005年という時代
2005年、日本では小泉純一郎首相が郵政民営化を掲げて衆議院を解散、いわゆる「郵政選挙」で自民党が圧勝、構造改革の象徴的な年となった。JR福知山線脱線事故、紀宮清子内親王のご結婚、愛・地球博(愛知万博)の開催と、平成中期の節目を象徴する出来事が重なった。海の向こうではローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が逝去しベネディクト16世が即位、ロンドン同時爆破事件、ハリケーン・カトリーナの惨事と、世界秩序が再び大きく揺れた年でもある。20年の熟成を経たこの一本は、その年に生まれた方への誕生年ワインとして、また人生の節目に開けるサン・テミリオン最高峰オーゾンヌの分身として、グラスの中に時代の空気ごと届けてくれる。
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父の退職祝いとして、父の入社年のワインを送りました。思い入れのある記念のプレゼントとして利用する方が多いと思いますが、こちらの想いにきちんと応えて下さっていると思います。
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