2012年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
2012年のボルドーは、生育期間を通して多くの厳しい気候イベントに見舞われましたが、最終的には満足できるから非常に良好な品質を持つワインが生産されました。特に右岸のメルローとソーテルヌの甘口ワインが注目すべき出来となりました。春は寒く湿潤で、ミルデューの発生が懸念され、開花も不均一でした。夏は比較的涼しく、8月には雨が降った地域もあり、ブドウの成熟に遅れが見られました。しかし、9月に入ると天候が回復し、乾燥した温暖な日が続いたことが、ブドウの成熟を助け、ヴィンテージを救う鍵となりました。丁寧な畑管理と収穫時の厳格な選果が、品質確保のために非常に重要となりました。
左岸
左岸のメドック地区では、主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンは、夏場の涼しさと収穫前の雨の影響を受けやすい傾向がありましたが、9月以降の好天により多くの畑で健全に成熟しました。ワインは全般的にエレガントで、フレッシュな果実味と明確な酸、そして洗練されたタンニンを備えています。長期熟成のポテンシャルを持つものも見られますが、偉大なヴィンテージほどの凝縮感やパワーはありません。ポイヤック、サンテステフ、サン・ジュリアン、マルゴーといった主要地区では、丁寧な畑管理と選果が行われたシャトーで満足できる品質の赤ワインが生産されました。グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも、シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンをはじめとするシャトーが満足できる赤ワインと、品質の高い辛口白ワインを生産しました。辛口白ワインは、フレッシュさとミネラル感を兼ね備えています。
右岸
右岸のポムロールやサンテミリオンでは、メルローが全般的に良好な出来となりました。夏場の比較的涼しい気候と9月以降の好天がメルローにとって有利に働き、豊かな果実味と柔らかな質感を持つワインが生まれました。サンテミリオンの石灰質台地や、ポムロールの優れたテロワールでは、表現力豊かでバランスの取れたワインが生産されました。シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・オーゾンヌ(サンテミリオン)、シャトー・ペトリュス、シャトー・ラフルール(ポムロール)といったトップシャトーは、優れたワインを生産し、右岸の可能性を示しました。右岸全体としては、左岸よりも全般的に成功したという評価が多く見られます。
ソーテルヌとバルサック
ソーテルヌおよびバルサックの甘口ワインにとっては、優れたヴィンテージとなりました。9月以降の乾燥した温暖な気候と、それに続く貴腐菌(ボトリティス・シネレア)の理想的な発生条件が整いました。その結果、豊かなアロマ、複雑な風味、そしてバランスの取れた酸を持つ、優れた品質の甘口ワインが広く生産されました。シャトー・ディケムをはじめとする多くのシャトーで、素晴らしい甘口ワインが生まれました。ただし、一部の生産者はこの年の甘口ワインを生産しなかったケースもあります。
ブルゴーニュ
2012年のブルゴーニュは、深刻な霜、雹害、そして病害により、多くの地域で収穫量が劇的に減少した、極めて厳しいヴィンテージとなりました。しかし、量が極めて少ない一方で、残ったブドウの品質は非常に高く、優れたワインが生産されました。春は寒く湿潤で、特に4月後半の霜と6月以降の雹害が広範囲に被害をもたらし、収穫量は例年の半分以下となった地域も珍しくありませんでした。夏場も天候は不安定で、ミルデューやオイディウムといった病害の懸念がありましたが、丁寧な畑管理と選果が品質確保のために不可欠でした。最終的に収穫期には好天に恵まれ、残ったブドウは健全に成熟しました。
ブルゴーニュ赤ワイン
赤ワイン(ピノ・ノワール)は、収穫量が少ないながらも、純粋で表現力のある果実味、驚くべき凝縮感、そして細かく滑らかなタンニンを備えた、優れた品質となりました。ワインは深みのある色合いを持ち、複雑なアロマと長い余韻が特徴です。エレガンスと構造を兼ね備え、長期熟成のポテンシャルも高いです。コート・ド・ニュイでは、ジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュといった村名地区およびグラン・クリュ、プルミエ・クリュ畑で、それぞれのテロワールの個性が見事に表現されたワインが生産されました。収量の少なさが凝縮度を高めています。
コート・ド・ボーヌ
コート・ド・ボーヌの赤ワインも、被害が少なかった地域では品質が非常に高く、ポマール、ヴォルネイ、アロース・コルトンといった村々で、構造がしっかりしていながらもエレガントな赤ワインが見られます。酸が綺麗で、バランスの取れた仕上がりです。
ブルゴーニュ白ワイン
白ワイン(シャルドネ)は、収穫量が極めて少なかった地域が多いものの、品質は優れていると評価されています。引き締まって緊張感のある酸、際立ったミネラル感、そして明確で表現力のある果実味を持つワインが主流です。濃縮感がありながらもバランスが取れています。コート・ド・ボーヌの白ワイン産地であるムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェでは、例外的な白ワインが数多く生産されました。シャブリ地区も深刻な霜害に見舞われましたが、残ったブドウからはクリスタルのようなミネラル感と純粋な果実味を持つ優れた白ワインが生産されました。マコネ地区も同様に収量は少なかったですが、品質は良好でした。全体として、ブルゴーニュの2012年は、収量は壊滅的な地域が多い一方、品質は例外的に高いヴィンテージと評価されています。
ローヌ
2012年のローヌ地方は、北部・南部ともに全般的に良好なヴィンテージと評価されています。厳しい気候イベントもありましたが、品質の高いワインも生産されました。
北部ローヌ
北部ローヌでは、主要品種であるシラーは、夏場の涼しさと収穫前の雨の影響を受けやすい傾向がありましたが、丁寧な畑管理を行った生産者からは品質の高い赤ワインが生産されました。ワインは全般的にエレガントで、フレッシュな果実味とバランスの取れた構造を持つスタイルとなりました。最高級のヴィンテージのような凝縮感や骨格はありませんが、純粋さと表現力を備えています。エルミタージュ、コート・ロティ、クローズ・エルミタージュ、サン・ジョセフ、コルナスといった地区で、満足できる品質の赤ワインが見られました。ヴィオニエから造られるコンドリューなども満足できる出来でした。
南部ローヌ
南部ローヌは全般的に良好なヴィンテージでした。グルナッシュは、夏場の比較的涼しい気候と収穫前の雨の影響を受けやすい傾向がありましたが、丁寧な畑管理と選果により品質が確保されました。ワインは全般的に軽めから中程度の骨格で、フレッシュな果実味とバランスの取れた構造を持ちます。シャトーヌフ・デュ・パプでは、エレガントで表現力のあるスタイルのワインが生産されましたが、偉大なヴィンテージほどの凝縮感や複雑さは限られていました。ジゴンダス、ヴァケイラスといった地区も全般的には満足できる出来でした。全体として、ローヌの2012年は、厳しい気候を経て、全般的に楽しめるワインが生産されたヴィンテージと言えます。
ロワール
2012年のロワール地方は、全般的に満足できるヴィンテージと評価されています。地域によって品質に差が見られました。春の霜害や夏の涼しさ、そして収穫前の雨が厳しい要因となりましたが、丁寧な対応を行った生産者からは品質の高いワインも生産されました。
ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランの産地であるサンセールやプイィ・フュメでは、全般的にフレッシュで引き締まった白ワインが生産されました。酸が綺麗で、ミネラル感も比較的よく表現されました。
シュナン・ブラン
シュナン・ブランの産地であるヴーヴレやモンルイ・シュール・ロワールでは、辛口、半辛口、甘口のいずれのスタイルも満足できる出来でした。一部で品質の高いものが生産されましたが、収量は限られました。サヴニエールでも、満足できるシュナン・ブランが見られます。
ロワール赤ワイン
カベルネ・フランを主体とする赤ワイン産地であるシノンやブルグイユでは、全般的に軽めから中程度の骨格で、表現力のある赤系果実の特性を持つワインが生産されました。タンニンは柔らかく、早くから楽しめるスタイルです。全体として、ロワールの2012年は、厳しい気候により品質にばらつきが見られましたが、品質の高いワインも生産されたヴィンテージと言えます。
アルザス
2012年のアルザスは、気候条件に恵まれ、リースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ブランなどの品種が健全に成熟しました。ワインはフレッシュで酸のバランスが良く、ミネラル感が豊かで、品種の特性を見事に表現しています。長期熟成のポテンシャルを持つ優れたヴィンテージと評価されています。
シャンパーニュ
2012年のシャンパーニュは、生育期間中に気候の変動がありましたが、特に後半は好天に恵まれ、非常に良質なブドウが収穫されました。収穫量は少なかったものの、果実味と酸のバランスが取れた複雑なスタイルのシャンパーニュが生産されています。一部ではグレートヴィンテージとして評価され、1947年、1990年、1996年などの名年に匹敵するという声もあります。全体的には非常に良好なヴィンテージとして評価されています。
イタリア
北部イタリア
2012年のイタリア北部、特にピエモンテ州は全般的に良好なヴィンテージでした。ネッビオーロは、暑く乾燥した夏の恩恵を受け、凝縮感のあるワインが生産されました。バローロやバルバレスコは、力強く表現力豊かなスタイルとなり、長期熟成のポテンシャルを持つものも見られます。ヴェネト州なども概ね満足できる出来でした。
中部イタリア
中部イタリアでは、トスカーナ州は全般的に良好なヴィンテージでした。キャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノのサンジョヴェーゼは、満足できるレベルに成熟し、構造と果実味のバランスが取れたワインが生産されました。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、品質の高いものが生産されていますが、暑さの影響を受けた地域も見られます。ラ・モッラ、モンフォルテ・ダルバ、セッラルンガ・ダルバ、バローロ、カスティリオーネ・ファッレット、モンタルチーノ、カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ、ガイオーレ・イン・キャンティ、ラッダ・イン・キャンティなどの村で特に高品質なワインが生まれました。
南イタリア
南イタリアも、全般的に良好なヴィンテージでした。暑く乾燥した気候により、ブドウは健全に成熟し、力強く表現力のある果実味を持つワインが生産されました。ただし、一部で極端な暑さの影響が見られた地域もあります。全体として、イタリアの2012年は、地域によって品質に差が見られましたが、全般的に満足できるから良好な品質のワインが生産されたヴィンテージでした。
スペイン
リオハ
2012年のリオハは、全般的に良好なヴィンテージでした。暑く乾燥した夏によりブドウは凝縮しましたが、収穫期の雨が懸念されました。丁寧な選果が品質確保のために重要となり、バランスが取れ表現力豊かな赤ワインが生産されました。長期熟成のポテンシャルを持つものも見られますが、ヴィンテージによってはばらつきがあります。リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・バハなどの地区で高品質なワインが見られました。
リベラ・デル・ドゥエロ
リベラ・デル・ドゥエロも全般的に良好なヴィンテージでした。暑く乾燥した夏がテンプラニーリョ(ティント・フィノ)にとって有利に働き、凝縮感がありながらもバランスの取れたワインが生産されました。ペニャフィエルなどの地区で特に良好なワインが見られます。
プリオラート
プリオラートでも品質の高いヴィンテージでした。カリニェナやガルナッチャは、暑く乾燥した気候に適応し、凝縮感がありながらもバランスの取れたワインとなりました。ラ・オルミガ、グラタリョフス、ポボレダなどの村や地区で素晴らしいワインが生まれました。その他の地域でも品質はばらつきましたが、満足できるワインが生産されています。全体として、スペインの2012年は、厳しい気候を経て、品質に差が見られましたが、全般的に満足できるから良好なヴィンテージと言えます。
ドイツ
リースリング
2012年のドイツは、全般的に良好から非常に良好なヴィンテージと評価されています。厳しい気候でしたが、品質の高いワインも生産されました。リースリングは、春の寒さや夏の涼しさ、そして収穫期の雨の影響を受けやすい傾向がありましたが、丁寧な畑管理と選果を行った生産者からは品質の高いワインが生産されました。モーゼル、ラインガウ、ナーエ、ファルツ、ラインヘッセンといった主要地域で、フレッシュな酸を持つ引き締まったリースリングが生産されました。ベルンカステル、ピースポート、ヴェーレン、ヨハニスベルク、ルーデスハイム、デイデスハイムなどの村が主要産地です。
遅摘みワイン
遅摘みワイン(シュペートレーゼ、アウスレーゼ)や極甘口ワイン(ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ)は生産量が限られましたが、品質の高いものが見られます。全体として、ドイツの2012年は、厳しい気候でしたが、品質の高いワインも生産されたヴィンテージと評価されています。
アメリカ
カリフォルニア
2012年のアメリカ、特にカリフォルニア州は、優れたヴィンテージと広く評価されています。生育期間を通して理想的に近い気候条件に恵まれ、品質の高いブドウが豊富に収穫されました。春から夏にかけて温暖で安定した気候が続き、ブドウは健全に、そして理想的に成熟しました。収穫期も理想的な天候でした。ナパ・ヴァレーやソノマ・カウンティといった主要地域では、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネといった主要品種がいずれも品質が非常に高いものとなりました。特に赤ワインは、凝縮感がありながらもバランスが取れ構造のしっかりした、長命なワインが生産されました。ナパ・ヴァレーでは、オークヴィル、ラザフォード、セント・ヘレナ、カリストガなど、ソノマ・カウンティでは、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ソノマ・コースト、アレクサンダー・ヴァレーなどで優れたワインが見られました。セントラルコーストやその他の地域も全般的に優れた出来でした。
オレゴン・ワシントン
オレゴン州やワシントン州も優れたヴィンテージでした。オレゴン州のピノ・ノワールやシャルドネは、表現力豊かでバランスの取れたワインが生産されました。ワシントン州でも、理想的な気候により品質の高い赤ワインが生産されました。全体として、アメリカの2012年は、品質が高く、豊富な収穫量にも恵まれた、優れたヴィンテージと評価されています。
オーストラリア
南オーストラリア
2012年のオーストラリアは、地域によってヴィンテージの出来にばらつきが見られましたが、全般的に良好な品質のワインが生産されました。南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーやマクラーレン・ヴェール、クナワラといった地域では、全般的に良好なヴィンテージでした。シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンは、凝縮感がありながらもバランスの取れたワインが生産されました。
その他の地域
ヴィクトリア州や西オーストラリア州のマーガレット・リヴァーも成功し、品質の高いワインが生産されました。ニューサウスウェールズ州の一部地域では、夏の乾燥や収穫期の天候変動の影響を受け、品質に差が出た地域も見られますが、満足できるワインが生産された地域も見られます。全体として、オーストラリアの2012年は、地域によって品質に差が見られましたが、多くの主要産地で満足できるから良好な品質のワインが生産されたヴィンテージでした。