1983年のヴィンテージ作柄・出来・評価
概況
1983年はヨーロッパ全体で、気候条件により地域による差があるものの、全体的に良好から非常に優れたワインが多く生産されました。特にフランスのボルドー、ローヌ北部、アルザス、ドイツ、ポルトガルのポートワインにおいて高品質のワインが見られます。
フランス
ボルドー
記録的な猛暑と干ばつ、病害リスクのある8月を経て、9月・10月には理想的な収穫条件が整い、赤ワインは特に成功しました。メドックではカベルネ・ソーヴィニヨン主体の骨格あるワインが、右岸ではメルローの芳醇さが光る親しみやすいスタイルとなりました。ソーテルヌでは貴腐菌の条件が理想的で、卓越した甘口ワインが生産されました。
ブルゴーニュ
1983年はブルゴーニュにとって難しいヴィンテージでした。春から夏の間に雹や病害の影響があり、特にヴォーヌ・ロマネやシャンボール・ミュジニーなどで収穫量が減少。コート・ド・ニュイでは良質な赤ワインが一部生まれましたが、全体的にはばらつきがありました。白ワインはリッチでボディがありつつも、酸がやや弱く熟成には向かない傾向が見られました。
ローヌ
北部ローヌ(エルミタージュ、コート・ロティ)は優れた年で、力強いシラー主体のワインが高評価。南部も全体的に良好な作柄で、果実味豊かなグルナッシュベースのワインが生産されました。
ロワール
ロワールは全体的には良好でしたが、ヴーヴレでは雹害により収量が制限されました。サンセールやプイィ・フュメではフレッシュでアロマティックなソーヴィニヨン・ブラン、アンジューやトゥーレーヌではバランスの取れたシュナン・ブランの白ワインが生産されました。
アルザス
アルザスでは1983年は卓越したヴィンテージ。貴腐菌が理想的に発生し、特にヴァンダンジュ・タルディヴとセレクション・ド・グラン・ノーブルが高品質。リースリングやピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールが豊かな酸と凝縮感を備えた甘口ワインに仕上がりました。
シャンパーニュ
1983年は健康なブドウから豊かで複雑なシャンパーニュが生産され、今では希少性が高まっています。
プロヴァンス
詳細な記録は少ないものの、温暖で乾燥した気候により、果実味豊かな赤・ロゼワインが生まれたと考えられます。
イタリア
ピエモンテ
1983年はピエモンテにとって弱いヴィンテージとされており、軽量で早熟なワインが多く、熟成向きではありません。一部の生産者が選果を徹底し、良質なネッビオーロを生産しました。
トスカーナ
トスカーナは全体的に良好な年で、キャンティ・クラッシコ・リゼルヴァをはじめ、バランスの取れたサンジョヴェーゼが多く見られました。モンタルチーノではやや不安定でしたが、トップ生産者は安定した品質を維持しました。
ヴェネト
詳細な評価は少ないものの、不安定な天候によりアマローネなどの品質にはばらつきが見られたと考えられます。
スペイン
リオハ
1983年のリオハはパッチーなヴィンテージで、品質にはばらつきがあります。長期熟成型ではなく、早飲みに向いたタイプが多く生産されました。
リベラ・デル・ドゥエロ
1983年当時はリオハほど知られていませんでしたが、Vega Siciliaなどの生産者はこの年にもワインをリリースしています。突出したヴィンテージではありませんが、一部のワインは熟成で複雑性を増しています。
ドイツ
1983年はドイツにおいて卓越したヴィンテージであり、モーゼル、ラインガウ、ファルツなどでアウスレーゼからトロッケンベーレンアウスレーゼ、さらにはアイスワインまで生産されました。非常に良好な気候条件のもとで、リースリングの酸・果実味・熟成能力がバランスよく発揮されています。
ポルトガル
1983年はヴィンテージ・ポートとして宣言された年であり、非常に優れたポートワインが多く生まれました。果実の凝縮感、タンニンの骨格、熟成による複雑味を兼ね備え、今なお高い評価を得ています。