1961年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
1961年のボルドーは、20世紀におけるワイン造りの歴史の中でも燦然と輝く、真に伝説的なヴィンテージとして広く認識されています。この年のワインは、その並外れた品質、凝縮感、そして驚異的な長期熟成能力により、今日でもなおワイン愛好家垂涎の的となっています。成功の背景には、特異な天候条件がありました。春には遅霜が広範囲に発生し、特に早咲きのメルロー種に大きな被害をもたらしました。続く開花期も悪天候に見舞われ、結実が悪く、結果として収穫量は平年の半分以下にまで激減しました。しかし、この自然の淘汰が、残ったブドウの品質を劇的に高めることになります。夏から収穫期にかけては、暑く乾燥した完璧な天候が続き、日照時間も豊富でした。水分ストレスと相まって、ブドウの実は小粒ながらも信じられないほど凝縮し、糖度、酸、タンニン、そして風味成分が非常に高いレベルでバランスしました。カベルネ・ソーヴィニヨンは特に素晴らしい出来栄えで、ワインに力強い骨格と深遠な複雑性を与えました。メルローも生き残ったものは高品質でしたが、収量が少なかったため、多くのワインでカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高くなりました。メドックの主要アペラシオン、例えばポイヤック(シャトー・ラトゥール、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン、シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランドなど)、サン・ジュリアン(シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ、シャトー・レオヴィル・バルトン、シャトー・レオヴィル・ポワフェレ、シャトー・デュクリュ・ボーカイユ、シャトー・グリュオー・ラローズなど)、マルゴー(シャトー・マルゴー、シャトー・パルメなど)、サンテステフ(シャトー・コス・デストゥルネル、シャトー・モンローズ、シャトー・カロン・セギュールなど)では、圧倒的な凝縮感、深遠なアロマ、そしてベルベットのようなタンニンを持つ、歴史に残るワインが数多く生まれました。グラーヴ地区でも、シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン、ドメーヌ・ド・シュヴァリエなどが、赤・白ともに複雑で力強く、長期熟成に耐える傑出したワインを生み出しました。右岸のポムロール(シャトー・ペトリュス、シャトー・ラフルール、シャトー・トロタノワ、ヴュー・シャトー・セルタン、シャトー・ラ・コンセイヤントなど)とサンテミリオン(シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・オーゾンヌ、シャトー・フィジャック、シャトー・カノンなど)では、メルロー主体のワインが豊潤で官能的、そして驚くほどの凝縮感を持ち、伝説的な品質となりました。ソーテルヌとバルサックの甘口貴腐ワインにとっては、春の霜の影響で生産量は非常に少なかったものの、秋の好適な条件により貴腐菌(ボトリティス・シネレア)が良好に発生し、シャトー・ディケムやシャトー・クリマンなどが、少量ながらも極めて凝縮度が高く、リッチで複雑な、素晴らしい甘口ワインを生産しました。グラーヴの辛口白ワインも、シャトー・オー・ブリオン・ブランやドメーヌ・ド・シュヴァリエ・ブランなどで優れたものが造られましたが、この年の圧倒的な赤ワインの評価には及ばないものの、非常に高品質でした。
ブルゴーニュ
1961年のブルゴーニュは、赤ワインを中心に非常に優れたヴィンテージであり、特にピノ・ノワールが素晴らしい深み、凝縮感、そして複雑性を示しました。白ワインもまた高品質で、バランスの取れたエレガントなものが生まれました。生育期間中の天候は概ね良好で、春から夏にかけて安定した気候が続き、収穫期も好天に恵まれました。収穫量は全体的にやや少なめでしたが、それがかえってブドウの凝縮度を高める結果となりました。コート・ド・ニュイでは、ヴォーヌ・ロマネ(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのラ・ターシュやリシュブールなど)、シャンボール・ミュジニー(ミュジニー、ボンヌ・マールなど)、ジュヴレ・シャンベルタン(クロ・ド・ベーズ、シャルム・シャンベルタンなど)、ニュイ・サン・ジョルジュ、クロ・ド・ヴージョといった名高いアペラシオンで、エレガントでありながら力強く、深遠なアロマとシルキーなタンニンを持ち、長期熟成によって真価を発揮する素晴らしい赤ワインが数多く生まれました。コート・ド・ボーヌでも、ポマール(特にレ・リュジアンなどのプルミエ・クリュ)、ヴォルネイ(クロ・デ・シェーヌやカイユレなどのプルミエ・クリュ)、アロース・コルトン(コルトンのグラン・クリュ)などで、豊かな果実味としっかりとしたストラクチャーを持つ、傑出した赤ワインが生産されました。白ワインも、ムルソー(レ・ペリエールやシャルムなどのプルミエ・クリュ)、ピュリニー・モンラッシェ(モンラッシェ、バタール・モンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェといったグラン・クリュ)、シャサーニュ・モンラッシェ、そしてコルトン・シャルルマーニュで、際立ったミネラル感、凝縮した果実味、そして熟成によって増す複雑な風味を持つ、非常に高品質なものが造られました。シャブリもまた、凝縮感としっかりとした酸を兼ね備えた優れた品質で、マコネやボジョレーといった南部ブルゴーニュでも、この年は通常よりも高品質なワインが生産されました。
ローヌ
1961年のローヌ地方は、北部・南部ともに歴史的な偉大なヴィンテージとして、ボルドーと並び称されるほどの輝かしい年となりました。理想的な天候条件に恵まれ、ブドウは完璧に熟し、非常に凝縮度の高い、力強いワインが生まれました。北部ローヌでは、エルミタージュ、コート・ロティ、コルナス、サン・ジョセフといったアペラシオンで、シラー種を主体とするワインが、濃厚な色調、爆発的なアロマ(黒系果実、スパイス、スミレ、獣肉など)、強靭なタンニン、そして驚異的な長期熟成能力を備えた、まさに伝説的な品質となりました。ポール・ジャブレ・エネのエルミタージュ・ラ・シャペルや、ギガルのコート・ロティ(特にラ・ランドンヌ、ラ・ムーリーヌ、ラ・テュルクといった単一畑シリーズが登場する以前のクラシックなキュヴェ)は、このヴィンテージを象徴する偉大なワインとして世界的に有名です。南部ローヌでも、シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダス、ヴァケラスなどで、グルナッシュを主体とするワインが、かつてないほどの力強さ、豊満な果実味、そしてアルコール度数の高さを持ちながらも、驚くべきバランスと複雑性を備えていました。シャトー・ド・ボーカステルやシャトー・ラヤスといったトップ生産者は、この年に彼らの歴史の中でも特筆すべき傑出した品質のワインを生み出しました。
ロワール
1961年のロワール地方は、特に甘口ワインにとって非常に良好なヴィンテージとなりました。シュナン・ブランから造られるヴーヴレ、モンルイ、コトー・デュ・レイヨン(特にカールド・ショームやボンヌゾーなどの甘口銘醸地)では、秋の好適な天候により貴腐菌が良好に発生し、非常に凝縮感があり、複雑性に富み、素晴らしい酸とのバランスを保った、長期熟成に耐える偉大な甘口ワインが生産されました。ソーヴィニヨン・ブランを主体とするサンセールやプイィ・フュメは、フレッシュで生き生きとした酸と強いミネラル感を持ち、アロマティックで高品質なものが造られました。カベルネ・フランを主体とするシノンやブルグイユなどの赤ワインも、バランスが良く、熟した果実味を持つ良好な品質でした。
シャンパーニュ
1961年のシャンパーニュは、優れたヴィンテージとして高く評価されています。暑く乾燥した夏と良好な収穫期の天候が、ピノ・ノワールとシャルドネの素晴らしい完熟を促しました。収穫量は比較的少なかったものの、その分ブドウは凝縮し、非常に質の高いものとなりました。この年に生産されたヴィンテージ・シャンパーニュは、力強さとフィネスを兼ね備え、豊かな風味と複雑性、そして卓越した長期熟成能力を持つものが多く見られました。特にクリュッグ、ボランジェ、サロンといったプレステージ・キュヴェを生産するメゾンからは、この年に伝説的なシャンパーニュがリリースされ、ピノ・ノワール主体のワインがその力強さと深みで特に高い評価を受けました。
イタリア
ピエモンテ
1961年のピエモンテは、バローロとバルバレスコにとって歴史的な偉大なヴィンテージの一つとして、その名を刻んでいます。ネッビオーロ種は理想的な天候条件下で完璧に熟し、その結果生まれたワインは、濃厚な色調、強靭なタンニン、豊かな酸、そして爆発的なアロマ(タール、バラ、トリュフなど)を備えた、極めてパワフルで長期熟成型のスタイルとなりました。これらのワインは、数十年の熟成を経てようやくその真価を発揮すると言われるほど、驚異的なポテンシャルを秘めていました。バローロ村、ラ・モッラ村、カスティリオーネ・ファレット村、セッラルンガ・ダルバ村、モンフォルテ・ダルバ村といったバローロの主要コミューンや、バルバレスコ、トレイゾ、ネイヴェといったバルバレスコ地区の村々で、ジャコモ・コンテルノ(特にモンフォルティーノ・リゼルヴァ)、ブルーノ・ジャコーザ、アンジェロ・ガヤといった伝説的な生産者たちが、この年に彼らのキャリアの中でも最高傑作と呼べるような、傑出したワインを生産しました。
トスカーナ
1961年のトスカーナは、サンジョヴェーゼ種を主体とする主要な赤ワインにとって非常に優れたヴィンテージとなりました。キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノなどのアペラシオンで、ブドウは凝縮感と素晴らしいバランスを持って成熟し、力強く、風味豊かで、長期熟成に適した高品質なワインが多く造られました。特にブルネッロ・ディ・モンタルチーノでは、ビオンディ・サンティが生産したリゼルヴァが、その途方もない長命さと複雑性で伝説的な評価を受けています。キャンティ地区でも、リッチでストラクチャーのしっかりした、熟成によって素晴らしい表情を見せるワインが生まれました。
ドイツ
1961年のドイツワインは、リースリング種にとって傑出したヴィンテージであり、特に高品質な貴腐ワイン(ベーレンアウスレーゼおよびトロッケンベーレンアウスレーゼ)が生産されたことで歴史的な評価を受けています。モーゼル、ラインガウ、ファルツ、ラインヘッセンといった主要なワイン産地では、夏の終わりから秋にかけての理想的な天候(乾燥した晴天と夜間の冷涼さ、そして適度な湿度)が貴腐菌の発生とブドウの濃縮を促しました。その結果、極めて高い糖度と凝縮した風味、そしてそれを支える鮮烈な酸が見事に調和した、甘美で複雑、かつ非常に長命な貴腐ワインが生まれました。エゴン・ミュラーのシャルツホーフベルガー・トロッケンベーレンアウスレーゼなどは、このヴィンテージのドイツワインの頂点を象徴する存在として知られています。シュペートレーゼやアウスレーゼ、さらには辛口のリースリングも、この年は非常に高品質で、バランスとフィネスに優れたものが造られました。
スペイン
リオハ
1961年のリオハは、非常に優れたヴィンテージとして高く評価されています。生育期間中の天候は概ね良好で、テンプラニーリョを主体とするブドウはよく熟し、凝縮感のある力強いワインが生まれました。これらのワインは、豊かな果実味、しっかりとしたタンニン、そして素晴らしい酸を持ち、長期熟成によってその真価を発揮するポテンシャルを備えていました。特にこの年に生産されたレセルバやグラン・レゼルバクラスのワインは、その品質の高さから称賛され、マルケス・デ・ムリエタやCVNE(クネ)といった歴史あるボデガから傑出したワインがリリースされました。リベラ・デル・ドゥエロ地方でも、この年は高品質なワインが生まれたと記録されています。
ポルトガル
ポート
1961年のポートは、ヴィンテージ・ポートとして広範には宣言されませんでした。しかし、ブドウの品質自体は非常に良好であったため、いくつかの主要なポートハウス、例えばキンタ・ド・ノヴァルは単独でヴィンテージ宣言を行い、ナシオナルを含む傑出したヴィンテージ・ポートを生産しました。また、宣言されなかったものの、他の多くの生産者も非常に高品質なシングル・キンタ・ヴィンテージポートや、長期熟成によって素晴らしい複雑味を帯びるコルヘイタ・ポート(単一収穫年の樽熟成トウニーポート)をこの年に仕込んでおり、これらは高い評価を得ています。キンタ・ド・ボンフィン(ダウ社所有)のような著名なキンタからも、凝縮感があり、熟成によって素晴らしい発展を遂げるワインが生産されました。
アメリカ
カリフォルニア
1961年のカリフォルニアは、良好なヴィンテージと評価されています。ナパ・ヴァレーを中心に、カベルネ・ソーヴィニヨンが特に優れた品質を示し、バランスが良く、しっかりとした骨格と熟成能力を持つワインが生産されました。この時期はカリフォルニアワイン産業が近代的な発展を遂げる黎明期にあり、ボーリュー・ヴィンヤードのジョルジュ・ド・ラトゥール・プライベート・リザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨンやイングルヌック・カスク・カベルネ・ソーヴィニヨンなどが、この年のカリフォルニアを代表する高品質なワインとして知られています。
オーストラリア
1961年のオーストラリアは、主要なワイン産地において高品質なワインが生まれた良好なヴィンテージとされています。バロッサ・ヴァレー、クナワラ、ハンター・ヴァレーなどで、シラーズ(シラー)とカベルネ・ソーヴィニヨンは非常によく熟し、凝縮した果実味としっかりとしたストラクチャーを持つ、長期熟成型のワインが生産されました。この年のペンフォールズ・グランジ(当時はグランジ・ハーミテージ)は、オーストラリアワインのアイコンとしてその評価を確固たるものにし、力強さ、複雑性、そして卓越した熟成能力を誇る偉大なワインとして知られています。