1959年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
1959年のボルドーは、20世紀を代表する真に伝説的なヴィンテージの一つであり、ほぼ完璧と言える天候条件に恵まれ、歴史に残る偉大なワインが数多く生まれました。穏やかな冬の後、春は暖かく、ブドウの生育は順調に進み、開花も早めでした。7月と8月は極めて暑く乾燥した気候が続き、ブドウの実は小粒ながらも糖度と風味成分が凝縮しました。9月中旬には恵みの雨が適度に降り、ブドウに水分を供給して最終的な成熟を助けました。9月20日頃から始まった収穫は、素晴らしい晴天の下で理想的な条件で行われました。その結果、ワインは非常に豊かな果実味、力強く熟したタンニン、バランスの取れた酸、そして高いアルコール度数を持ち、圧倒的な凝縮感と驚異的な長期熟成能力を備えることとなりました。メドックの主要アペラシオン、例えばポイヤック(シャトー・ラトゥール、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラフィット・ロートシルトなど)、サン・ジュリアン(シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ、シャトー・レオヴィル・バルトン、シャトー・レオヴィル・ポワフェレ、シャトー・デュクリュ・ボーカイユなど)、マルゴー(シャトー・マルゴー、シャトー・パルメなど)、サンテステフ(シャトー・コス・デストゥルネル、シャトー・モンローズなど)では、その力強さとエレガンス、深遠な複雑性において歴史的な評価を受けるワインが生産されました。グラーヴ地区でも、シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン、ドメーヌ・ド・シュヴァリエなどが、赤・白ともに卓越した品質を示しました。右岸のポムロール(シャトー・ペトリュス、シャトー・ラフルール、シャトー・トロタノワ、ヴュー・シャトー・セルタン、シャトー・ラ・コンセイヤントなど)とサンテミリオン(シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・オーゾンヌ、シャトー・フィジャック、シャトー・カノンなど)では、メルローがその豊潤さと官能性を最大限に発揮し、非常に凝縮感があり、長期熟成に優れた偉大なワインが生まれました。ソーテルヌとバルサックの甘口貴腐ワインにとっても素晴らしい年で、秋の好適な条件が貴腐菌(ボトリティス・シネレア)の理想的な発生を促し、シャトー・ディケム、シャトー・クリマン、シャトー・クーテなどが、極めて濃密で複雑、リッチでありながらも見事な酸とのバランスを保った、歴史的な甘口ワインを生産しました。グラーヴの辛口白ワインも、シャトー・オー・ブリオン・ブランやドメーヌ・ド・シュヴァリエ・ブランなどで、リッチで力強く、熟成によって素晴らしい複雑性が現れる高品質なものが造られました。
ブルゴーニュ
1959年のブルゴーニュは、赤ワイン・白ワインともに傑出した、歴史に残る偉大なヴィンテージです。生育期間中の天候は非常に良好で、特に暑く乾燥した夏と、収穫前の9月に降った適度な雨が、ピノ・ノワールとシャルドネの完璧な完熟を促しました。赤ワインは非常に色が濃く、豊かで凝縮した果実味、力強いタンニン、そしてそれを支えるしっかりとした酸が見事に調和し、卓越したストラクチャーと驚異的な長期熟成能力を備えています。コート・ド・ニュイでは、ヴォーヌ・ロマネ(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのラ・ターシュやリシュブールなど)、シャンボール・ミュジニー(ミュジニー、ボンヌ・マールなど)、ジュヴレ・シャンベルタン(クロ・ド・ベーズ、シャルム・シャンベルタンなど)、ニュイ・サン・ジョルジュ、クロ・ド・ヴージョといった名高いアペラシオンで、力強く、深遠な複雑性を持ち、熟成の頂点に達するまでに数十年を要するような偉大な赤ワインが数多く生まれました。コート・ド・ボーヌでも、ポマール(特にレ・リュジアンなどのプルミエ・クリュ)、ヴォルネイ(クロ・デ・シェーヌなどのプルミエ・クリュ)、アロース・コルトン(コルトンのグラン・クリュ)などで、豊満な果実味としっかりとした骨格を持つ、長期熟成に優れた赤ワインが生産されました。白ワインも同様に傑出しており、ムルソー(レ・ペリエールやシャルムなどのプルミエ・クリュ)、ピュリニー・モンラッシェ(モンラッシェ、バタール・モンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェといったグラン・クリュ)、シャサーニュ・モンラッシェ、そしてコルトン・シャルルマーニュで、豊満でリッチな果実味、凝縮感、そして熟成によって花開くナッツや蜂蜜のような複雑なブーケを持つ、偉大な白ワインが生まれました。シャブリもまた、力強さとミネラル感を兼ね備えた優れた品質で、マコネやボジョレーといった南部ブルゴーニュでも、この年は通常よりも高品質なワインが生産されました。
ローヌ
1959年のローヌ地方は、北部・南部ともに非常に優れた、記憶に残るヴィンテージとなりました。暑く乾燥した夏が、シラー種やグルナッシュ種といった主要品種の完璧な完熟を促し、非常に凝縮感があり、力強いワインが生まれました。北部ローヌでは、エルミタージュ、コート・ロティ、コルナス、サン・ジョセフといったアペラシオンで、シラー種を主体とするワインが、濃厚な色調、スパイシーで複雑なアロマ、強靭なタンニン、そして素晴らしい長期熟成能力を備えた傑出した品質となりました。ポール・ジャブレ・エネのエルミタージュ・ラ・シャペルや、ギガルのコート・ロティなどが、このヴィンテージの北部ローヌを代表する偉大なワインとして知られています。南部ローヌでも、シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダス、ヴァケラスなどで、グルナッシュを主体とするワインが、豊満で力強く、高いアルコール度数を持ちながらも、驚くべきバランスと複雑性を備えていました。シャトー・ド・ボーカステルやシャトー・ラヤスといったトップ生産者は、この年に彼らの歴史の中でも特筆すべき傑出した品質のワインを生み出しました。
ロワール
1959年のロワール地方は、特に甘口ワインにとって傑出したヴィンテージとなりました。暑く乾燥した夏の後、秋の好適な天候が貴腐菌(ボトリティス・シネレア)の理想的な発生を促し、シュナン・ブランから造られるヴーヴレ、モンルイ、コトー・デュ・レイヨン(特にカールド・ショームやボンヌゾーなどの甘口銘醸地)では、極めて濃密で凝縮感があり、複雑性に富み、素晴らしい酸とのバランスを保った、長期熟成に耐える偉大な甘口ワインが生産されました。ソーヴィニヨン・ブランを主体とするサンセールやプイィ・フュメは、フレッシュでアロマティック、品種特有の生き生きとした果実味とミネラル感を備えたエレガントな白ワインとなりました。辛口のサヴニエールもまた、力強くミネラリーで長命なものが造られ、カベルネ・フランを主体とするシノンやブルグイユなどの赤ワインも、熟した果実味としっかりとしたストラクチャーを持つ高品質なものでした。
シャンパーニュ
1959年のシャンパーニュは、傑出したヴィンテージとして高く評価されています。非常に暑く乾燥した夏が、ピノ・ノワールとシャルドネの素晴らしい完熟を促し、収穫されたブドウは糖度が高く、豊かな風味を備えていました。この年に生産されたヴィンテージ・シャンパーニュは、豊満で力強く、リッチな果実味と複雑性、そして卓越した長期熟成能力を持つものが多く見られました。クリュッグ、ボランジェ、サロン、ポル・ロジェといったプレステージ・キュヴェを生産するメゾンからは、この年にそれぞれのハウススタイルを反映した、記憶に残る素晴らしいシャンパーニュがリリースされました。
イタリア
ピエモンテ
1959年のピエモンテは、バローロとバルバレスコにとって非常に優れた、時には偉大と評されるヴィンテージです。暑く乾燥した夏が、ネッビオーロ種の完璧な完熟を促し、その結果生まれたワインは、濃厚な色調、力強いタンニン、豊かな酸、そして凝縮した果実味と複雑なアロマ(タール、バラ、スパイスなど)を備えた、極めてパワフルで長期熟成型のスタイルとなりました。バローロ村、ラ・モッラ村、カスティリオーネ・ファレット村、セッラルンガ・ダルバ村、モンフォルテ・ダルバ村といったバローロの主要コミューンや、バルバレスコ、トレイゾ、ネイヴェといったバルバレスコ地区の村々で、ジャコモ・コンテルノ、ブルーノ・ジャコーザ、アンジェロ・ガヤといった、今日では伝説的な生産者たちが、この年に素晴らしい品質のワインを生産しました。
トスカーナ
1959年のトスカーナは、サンジョヴェーゼ種を主体とする主要な赤ワインにとって非常に優れたヴィンテージとなりました。暑く乾燥した夏がブドウの完熟を助け、キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノなどのアペラシオンで、凝縮感があり、バランスが良く、力強いストラクチャーと豊かな風味を持ち、長期熟成に適した高品質なワインが多く造られました。特にブルネッロ・ディ・モンタルチーノでは、ビオンディ・サンティが生産したリゼルヴァが、その途方もない長命さと深遠な複雑性で非常に高い評価を受けています。キャンティ地区でも、リッチで風味豊かで、熟成によって素晴らしい表情を見せるワインが生まれました。
ドイツ
1959年のドイツワインは、リースリング種にとって歴史的な偉大なヴィンテージの一つとして、その名を刻んでいます。モーゼル、ラインガウ、ファルツといった主要なワイン産地では、極めて暑く乾燥した夏と、それに続く秋の理想的な天候が、ブドウの糖度を驚異的なレベルにまで高めました。その結果、カビネットからシュペートレーゼ、アウスレーゼ、そして特にベーレンアウスレーゼやトロッケンベーレンアウスレーゼといった高級甘口ワインまで、全てのカテゴリーで傑出した品質のワインが生産されました。これらのワインは、極めて高い糖度と凝縮した風味を持ちながらも、リースリング特有の鮮烈な酸が見事に調和し、甘美で複雑、かつ非常に長命なものとなりました。エゴン・ミュラーのシャルツホーフベルガー・アウスレーゼ(あるいはそれ以上)などは、このヴィンテージのドイツワインの頂点を象徴する存在として知られています。
スペイン
リオハ
1959年のリオハは、非常に優れたヴィンテージとして高く評価されています。暑く乾燥した夏が、テンプラニーリョを主体とするブドウの完璧な完熟を促し、その結果生まれたワインは、色が濃く、凝縮感があり、力強いタンニンと豊かな風味、そして素晴らしいバランスを持ち、長期熟成によってそのポテンシャルを最大限に発揮するものでした。特にこの年に生産されたレセルバやグラン・レゼルバクラスのワインは、その品質の高さから称賛され、マルケス・デ・ムリエタやCVNE(クネ)といった歴史あるボデガから傑出したワインがリリースされました。リオハ・アルタ地区やリオハ・アラベサ地区で、特に高品質なワインが生まれたとされています。
ポルトガル
ポート
1959年のポートは、ヴィンテージ・ポートとして広範には宣言されませんでしたが、ブドウの品質は非常に良好でした。暑く乾燥した夏がブドウの成熟を促し、特にキンタ(単一ブドウ畑)レベルでは卓越したワインが造られました。そのため、いくつかの生産者は単独でヴィンテージ宣言を行ったり、あるいは非常に高品質なシングル・キンタ・ヴィンテージポートや、長期熟成によって素晴らしい複雑味を帯びるコルヘイタ・ポート(単一収穫年の樽熟成トウニーポート)をこの年に仕込んでおり、これらは高い評価を得ています。キンタ・ド・ノヴァルや、ダウ社のキンタ・ド・ボンフィンなどが、この年に良好な品質のワインを生産した例として挙げられます。
アメリカ
カリフォルニア
1959年のカリフォルニアは、良好なヴィンテージと評価されています。暑く乾燥した夏が、カベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルといった主要品種の素晴らしい完熟を促し、その結果、力強く、風味豊かで、しっかりとした骨格と熟成能力を持つワインが多く生産されました。この時期はカリフォルニアワイン産業が品質向上に向けて大きく前進していた時代であり、ボーリュー・ヴィンヤードのジョルジュ・ド・ラトゥール・プライベート・リザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨンやイングルヌック・カスク・カベルネ・ソーヴィニヨンなどが、この年のカリフォルニアを代表する高品質なワインとして知られています。
オーストラリア
1959年のオーストラリアは、主要なワイン産地において高品質なワインが生まれた良好なヴィンテージとされています。バロッサ・ヴァレー、クナワラ、ハンター・ヴァレーなどで、シラーズ(シラー)とカベルネ・ソーヴィニヨンは非常によく熟し、凝縮した果実味としっかりとしたストラクチャーを持つ、長期熟成型のワインが生産されました。この年のペンフォールズ・グランジ(当時はグランジ・ハーミテージ)は、その力強さ、複雑性、そして卓越した熟成能力を誇る偉大なワインとして、オーストラリアワインのアイコンとしての評価をさらに高めました。