1969年のヴィンテージ作柄・出来・評価
概況
1969年はヨーロッパ全体で地域差の大きいヴィンテージとなりました。ボルドーでは天候不順により赤ワインが不振だった一方で、ブルゴーニュでは赤・白ともに素晴らしいワインが生まれた年として評価されています。北ローヌ、アルザス、ドイツの一部では良質なワインが見られました。
フランス
ボルドー
1969年のボルドーは赤ワインにとって厳しい年でした。9月の降雨がブドウの熟成を妨げ、灰色かび病の影響も広がりました。左岸の主要アペラシオンでは軽く水っぽいワインが多く、熟成能力も乏しいとされます。右岸も同様にメルロー主体のワインは軽やかで早飲み向けでした。甘口ワインの産地であるソーテルヌでは貴腐の発生に恵まれ、リッチで完成度の高いワインが生まれた優良年となりました。
ブルゴーニュ
ブルゴーニュでは赤・白ともに非常に高品質なワインが生まれました。特に赤ワインは力強く、バランスが良く、長期熟成に耐える骨格を持ちます。白ワインも果実味とミネラルのバランスに優れ、厚みと繊細さを兼ね備えた仕上がりでした。特にムルソー、ピュリニィ=モンラッシェ、シャサーニュ=モンラッシェなどの白は、今なお評価が高く、1960年代で最も優れたヴィンテージのひとつとされています。
ローヌ
北部ローヌでは、1969年は力強く長命なシラー主体の赤ワインが生産されました。エルミタージュやコート・ロティでは凝縮感に富み、熟成によって複雑さを増した優れたワインが存在します。南部ローヌではばらつきがあるものの、天候には恵まれ、果実味のあるグルナッシュ主体のワインが多く造られました。
ロワール
ロワールでは全体的に安定した気候で、サンセールやプイィ・フュメでは爽やかでフレッシュな白ワインが、ヴーヴレではシュナン・ブランによるややリッチなスタイルのワインが生産されました。長期熟成向きではないものの、当時の典型的なスタイルをよく表しています。
アルザス
1969年のアルザスはリースリング、ピノ・ブラン、ゲヴュルツトラミネールなどの品種で非常に良好なワインが生まれました。10月中旬からの収穫は晴天に恵まれ、しっかり熟した果実からフレッシュで芳醇なワインが造られました。全体的にエレガントで骨格のあるスタイルが多く見られます。
シャンパーニュ
この年のシャンパーニュは収穫量に恵まれたうえ、質の高い果実が収穫されました。構造のしっかりしたヴィンテージ・シャンパーニュが造られ、特に一部のプレステージ・キュヴェは今日でも高く評価されています。
イタリア
ピエモンテ
ピエモンテでは1969年はネッビオーロにとって良好な年で、しっかりとしたタンニンと酸を備えたクラシックなスタイルのバローロやバルバレスコが造られました。特に伝統的な生産者の手によるワインは、熟成によって見事な複雑さを見せています。
トスカーナ
トスカーナでも良好な気候に恵まれ、キャンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、しっかりとした骨格とサンジョヴェーゼの果実味を活かしたワインに仕上がりました。現代的なスタイルとは異なるものの、クラシックな魅力を持つヴィンテージです。
ヴェネト
ヴェネトにおいては、特筆すべき記録は少ないものの、安定した気候の中でアマローネなどの濃縮感あるワインが造られた年とされています。
スペイン
リオハ
1969年のリオハは「普通の年」とされており、収量は多かったものの、品質にはばらつきがありました。トップ生産者の中には熟成向きのクラシカルなスタイルを造ったところもありますが、全体としては早飲みのスタイルが多く見られます。
リベラ・デル・ドゥエロ
1969年当時のリベラ・デル・ドゥエロはまだ知名度が低く、評価に値するワインは限られていましたが、伝統ある生産者による少量生産の良質ワインは存在します。
ドイツ
1969年はドイツにとっても良好なヴィンテージであり、リースリング主体の高品質なワインが多く生産されました。モーゼルやラインガウでは、酸と果実味のバランスが良く、アウスレーゼやシュペートレーゼの出来が特に良好とされます。
ポルトガル
この年は一部の生産者がヴィンテージ・ポートをリリースしたものの、公式なヴィンテージ宣言年ではありませんでした。熟成能力の高いキンタ単位のワインが造られた例もあり、コルヘイタタイプで注目されるものもあります。