2011年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
2011年はフランスの多くのワイン産地で、暑く乾燥した春による早い生育と、冷涼で湿度の高い夏による成熟の遅れが特徴の挑戦的なヴィンテージだった。収穫期の不安定な天候が品質を左右し、2009年や2010年ほどの凝縮感はないが、フレッシュな酸とテロワールを反映したワインが生まれた。生産者の選果と畑の立地が鍵となった。
ボルドー
2011年のボルドーはクラシックなスタイルで、2009年や2010年の豊満さに比べ控えめ。春の暑さと乾燥が早い生育を促したが、冷涼で日照不足の夏が成熟を不均一にし、収穫は早めで天候が不安定だった。赤ワインは酸とタンニンがしっかりだが果実味は中程度で、辛口白ワインと甘口白ワインが特に成功した。
メドック / 左岸: カベルネ・ソーヴィニヨンはフェノール類の成熟に苦労し、クラシックだが果実味が控えめ。
- サン・テステフ: タンニンと酸が強く、厳格な印象。
- ポイヤック: ラフィット・ロートシルトやラトゥールは引き締まったスタイルで、深みに欠ける。
- サン・ジュリアン: エレガントだがミッドパレットが薄く、熟成に時間がかかる。
- マルゴー: 繊細だが希薄な場合があり、品質にばらつき。
グラーヴ / ペサック・レオニャン: 赤ワインは左岸同様に果実味が控えめ。辛口白ワインはソーヴィニヨン・ブランとセミヨンがフレッシュでアロマティック、良好な熟成能力を持つ。
サン・テミリオン / ポムロール / 右岸: メルローは水はけの良い畑で果実味としなやかなタンニンを持つワインを生産。ポムロールは特に成功し、比較的早く楽しめるが、トップヴィンテージの複雑さには欠ける。
ソーテルヌ / バルサック: 貴腐菌の発生が良好で、凝縮感とバランスの取れた酸を持つ高品質な甘口ワインが生産された。シャトー・ディケムなどが優れた評価を得た。
ブルゴーニュ
暖かい春後の冷涼で湿度の高い夏が成熟を遅らせ、収穫期の腐敗リスクで厳格な選果が必要だった。赤ワインはフレッシュで早く楽しめるが、白ワインが特に高品質。
コート・ド・ニュイ: ピノ・ノワールは赤系果実のアロマと生き生きした酸、テロワールの透明性が特徴。エレガントだが力強さに欠ける。
- ジュヴレ・シャンベルタン: シャンベルタンなどでエレガンスが際立つ。
- シャンボール・ミュジニー: ミュジニーなどで繊細さが魅力。
- ヴォーヌ・ロマネ: ロマネ・コンティなどはアロマティックだが深みは控えめ。
コート・ド・ボーヌ: 赤ワインはフレッシュだが凝縮感に欠ける。白ワインはシャルドネが熟した果実味としっかりした酸、ミネラル感で良好な熟成能力を持つ。
- コルトン・シャルルマーニュ: 凝縮感とミネラル感が優れる。
- ムルソー: ペリエールなどでバランスの良いワイン。
- ピュリニー・モンラッシェ: モンラッシェなどでピュアでエレガント。
シャブリ: クラシックなスタイルで、ミネラル感と柑橘系の果実味、しっかりした酸がバランス良く、良好なヴィンテージ。
ローヌ
温暖で安定した気候により、果実味豊かでバランスの良いワインが生産された。偉大ではないが信頼できる品質。
北部ローヌ: シラーは熟した果実味とスパイシーさで魅力的なワイン。
- コート・ロティ: 黒系果実とバランスの良いタンニン。
- エルミタージュ: しっかりした構造で早く楽しめる。
- コルナス: 力強さと果実味のバランス。
- コンドリュー: ヴィオニエはアロマティックで酸がバランス良い。
南部ローヌ: グルナッシュがよく熟し、豊かで柔らかいタンニンのワイン。
- シャトーヌフ・デュ・パプ: 熟した果実とスパイスで早く楽しめる。
- ジゴンダス: 果実味と力強さがバランス良い。
ロワール
春の暑さと夏の冷涼さで品質が安定し、熟度と酸のバランスが良いワインが生産された。
ペイ・ナンテ: ミュスカデは熟度とフレッシュな酸がバランス良い。
アンジュー・ソミュール / トゥーレーヌ: シュナン・ブランとカベルネ・フランが成功。
- ヴーヴレ / モンルイ: 辛口は果実味と酸が良好、甘口は貴腐菌で高品質。
- サヴニエール: リッチな辛口でミネラル感が強い。
- シノン / ブルグイユ: カベルネ・フランは果実味豊かでタンニンが柔らかい。
サントル・ニヴェルネ:
- サンセール / プイィ・フュメ: ソーヴィニヨン・ブランは熟した果実(白桃など)と十分な酸で豊かなスタイル。
シャンパーニュ
春の暑さと夏の病害(灰色カビ病)、霜や雹が課題の困難なヴィンテージ。早い収穫で成熟不足や希薄さが見られ、多くのメゾンがヴィンテージ・シャンパーニュを生産せず、質は低いと評価される。
アルザス
温暖で乾燥した年で、ブドウがよく熟し、リッチでアルコール度数が高めのワイン。リースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールは豊満だが、鋭い酸に欠ける場合がある。甘口ワインも高糖度で良好。
イタリア
温暖から暑い夏で収穫が早まり、熟した果実味と高いアルコール度数のワインが生産された。
ピエモンテ:
- バローロ / バルバレスコ: ネッビオーロは色が濃く、力強く、熟した果実味と豊富なタンニンで早熟だが熟成能力がある。
トスカーナ:
- ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ: サンジョヴェーゼはパワフルで凝縮感があり、長期熟成向きだがやや単調な場合も。
- キャンティ・クラシコ: 熟した果実味で豊満、アルコールが高め。
- スーパートスカン: ボルゲリで熟した力強いスタイル。
スペイン
高温でブドウが早く熟し、熟した果実味としっかりしたストラクチャーのワインが生産された。
リオハ: テンプラニーリョは熟した果実とスパイスで豊かな味わい。
リベラ・デル・ドゥエロ: ティント・フィノは濃厚で力強い、熟成ポテンシャルが高い。
プリオラート: ガルナッチャとカリニェナは濃厚な果実味とミネラル感で長期熟成向き。
リアス・バイシャス: アルバリーニョはフレッシュな酸と豊かな果実味で高品質。
ドイツ
温暖で乾燥した秋が理想的な収穫条件をもたらし、傑出したヴィンテージ。リースリングは辛口から甘口までバランスが良く、熟成能力が高い。
- モーゼル / ラインガウ / プファルツ: 熟した果実味と十分な酸、クリーンな貴腐菌で甘口は凝縮感とエレガンスを持つ。
アメリカ(カリフォルニア)
冷涼で困難なヴィンテージ。春の雨と夏の低温で成熟が遅れ、秋の雨と腐敗リスクが課題。軽やかで酸が高いワインが特徴。
ナパ・ヴァレー:
- カベルネ・ソーヴィニヨン: ボディが軽く、酸が高めで青っぽいニュアンス。タンニンが硬い場合も。
- シャルドネ: エレガントで酸がしっかりしたスタイル。
ソノマ・カウンティ:
- ピノ・ノワール: ソノマ・コーストなどでエレガントだが成熟不足のリスク。
- シャルドネ: フレッシュな酸とミネラル感が特徴。
- ジンファンデル: 軽やかなスタイル。
オーストリア
グリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングが熟した果実味と高い酸、ミネラル感でバランス良く、ヴァッハウやカンプタールで高品質なワインが生産された。
ポルトガル
理想的な天候でブドウが完璧に熟し、クラシック・ヴィンテージとして評価されるポートワイン。深い色調、熟した果実味、力強いタンニンと酸のバランスで長期熟成に最適。テイラーズ、グラハムズなどがヴィンテージ宣言。
2011年のヴィンテージ
ボルドーでもブルゴーニュでもフランス全域で2009、2010と素晴らしい年が続いたため、 2011はそれらグレートヴィンテージには及ばないという評価からワインの先物市場(プリムール)でもそれまで高騰していた価格はいったん落ち着きを見せました。
ボルドーでは夏場の不安定な気候から、収穫が心配されましたが9月には良好な天気の日が増え、日射量も持ち直しましたが、 メドック北部サンテステフやポイヤックなどでは雹(ひょう)の被害もあったようです。
いくつか心配された要素はあったものの、出来は平年並み、そしてやはりそんな環境の中でも一流シャトーでは素晴らしい出来のワインが沢山リリースされました。