1976年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
1976年のボルドーは、全体として満足から良好なヴィンテージとして評価されています。非常に暑く乾燥した夏が特徴で、一部では干ばつによるストレスの影響も見られました。収穫は9月中旬と例年より早く始まりました。丁寧な畑管理が行われたシャトーや、適切なタイミングで収穫が行われた地域では、品質の高いワインが生産されました。収穫期前に雨が降った地域もあり、品質にばらつきが見られました。
左岸のメドック地区では、主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンは全般的に良好な出来でした。暑さの影響で凝縮感のある果実味が特徴ですが、一部でタンニンが硬く感じられるものも見られました。ポイヤック(シャトー・ラフィット・ロスチャイルド、シャトー・ムートン・ロスチャイルド、シャトー・ラトゥールなど)、サンテステフ(シャトー・コス・デストゥルネル、シャトー・モンローズなど)、サン・ジュリアン(シャトー・デュクリュ・ボーカイユ、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズなど)、マルゴー(シャトー・マルゴー、シャトー・パルメなど)といったアペラシオンでは、満足から非常に良好な品質の赤ワインが見られました。グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも、シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンをはじめとするシャトーが良好な赤ワインを生産しました。
右岸のポムロールやサンテミリオンでは、メルローが全般的に良好な出来となりました。暑く乾燥した夏がメルローにとって有利に働き、豊かな果実味と柔らかな質感を持つワインが生まれました。サンテミリオンの石灰質台地や、ポムロールの優れたテロワールでは、表現力豊かでバランスの取れたワインが生産されました。右岸全体としては、左岸と同様に満足から良好なヴィンテージでした。
ソーテルヌおよびバルサックの甘口ワインにとっては、優れたヴィンテージとなりました。理想的な貴腐菌(ボトリティス・シネレア)の発生に必要な気候条件が整い、豊かなアロマ、複雑な風味、そしてバランスの取れた酸を持つ、素晴らしい品質の甘口ワインが広く生産されました。完熟したブドウから上質なワインが生まれ、特に優れた出来となりました。
ブルゴーニュ
1976年のブルゴーニュは、全体として満足から良好なヴィンテージとして評価されています。3年続きの不作の後、小雨と高温に恵まれ、久しぶりの当たり年となりました。色づき・果実味・エキス分・アルコール分をよく含んだワインが造られています。
赤ワイン(ピノ・ノワール)は、全般的に豊かで力強く、肉付きの良いスタイルとなりました。暑さの影響で凝縮感のある果実味が特徴ですが、一部で乾燥果実のニュアンスが見られるものもありました。タンニンは熟しており、バランスが取れています。コート・ド・ニュイのジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー(ミュジニーなど)、ヴージョ(クロ・ド・ヴージョ)、ヴォーヌ・ロマネ(ロマネ・コンティ、ラ・ターシュなど)、ニュイ・サン・ジョルジュといったアペラシオンおよびグラン・クリュ、プルミエ・クリュ畑で、満足から非常に良好な品質の赤ワインが生産されました。
コート・ド・ボーヌの赤ワインも全般的に良好な出来でした。ポマール、ヴォルネイ、アロース・コルトン(コルトン)といった村々で、豊かで肉付きの良い赤ワインが見られます。
白ワイン(シャルドネ)も、全般的に良好な品質でした。暑さの影響で酸は例年の冷涼なヴィンテージほど高くありませんが、豊かで表現力豊かな特徴を持ちます。コート・ド・ボーヌの白ワイン産地であるムルソー、ピュリニー・モンラッシェ(モンラッシェなど)、シャサーニュ・モンラッシェでは、満足から非常に良好な白ワインが生産されました。シャブリ地区も全般的に良好な白ワインが生産されました。全体として、ブルゴーニュの1976年は、温暖な気候を反映した、より豊かなスタイルのワインが生まれたヴィンテージと評価されています。
ローヌ
1976年のローヌ地方は、北部・南部ともに全般的に満足のいくヴィンテージでした。乾燥した日が多く、非常に暑く乾燥した夏が特徴でした。赤ワインは濃厚でパワフルなスタイルに仕上がっています。
北部ローヌでは、主要品種であるシラーは、暑さの影響で凝縮感のある果実味が特徴ですが、一部で過熟のニュアンスが見られるものもありました。ワインは全般的に豊かで力強いスタイルです。エルミタージュ、コート・ロティ、クローズ・エルミタージュ、サン・ジョセフ、コルナスといったアペラシオンで、満足のいく品質の赤ワインが見られました。ヴィオニエから造られるコンドリューなども満足のいく出来でした。
南部ローヌも全般的に満足のいくヴィンテージでした。グルナッシュを主体とする赤ワインは、暑さの影響で力強く豊かな果実味が特徴ですが、一部でバランスの取れていないものも見られました。シャトーヌフ・デュ・パプでは、満足のいく品質のワインが生産されました。全体として、ローヌの1976年は、温暖な気候を反映した、より豊かなスタイルのワインが生産されたヴィンテージと言えます。長期熟成にも向く優れたワインが多く生まれました。
ロワール
1976年のロワール地方は、全体として満足のいくヴィンテージと評価されています。夏場は非常に暑く乾燥しており、ブドウの成熟を助けましたが、干ばつによるストレスの影響が見られた地域もありました。辛口・甘口白ワインともに高評価でした。
ソーヴィニヨン・ブランの産地であるサンセールやプイィ・フュメでは、全般的により豊かな骨格で、表現力豊かな果実味を持つ白ワインが生産されました。例年のシャープなスタイルとは異なり、よりまろやかな特徴を持つものが多い傾向です。
シュナン・ブランの産地であるヴーヴレやモンルイ・シュール・ロワール、コトー・デュ・レイヨンでは、辛口、半辛口、甘口のいずれのスタイルも満足のいく出来でした。夏場の非常に温暖な気候が、特に甘口ワインの生産に好適に働いた地域もありました。
カベルネ・フランを主体とする赤ワイン産地であるシノンやブルグイユでは、全般的に豊かで表現力豊かな赤系果実の特徴を持ち、構造がしっかりしたワインが生産されました。全体として、ロワールの1976年は、温暖な気候を反映した、より豊かなスタイルのワインが生産され、凝縮感とバランスの良いワインが特徴のヴィンテージでした。
アルザス
アルザスの1976年は、五つ星の優良ヴィンテージで、深みと濃度に優れた長命なワインが多く造られました。異常な猛暑と乾燥の影響で非常に豊かで凝縮感のある白ワインが生産されました。
リースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカなどの主要品種は、いずれも高品質なワインが生まれています。凝縮感が強く、豊かな果実味とバランスの取れた酸を持つワインが特徴です。遅摘みワインや貴腐ワインも特に優れた出来となりました。
全体としてアルザスの1976年は、温暖な気候を反映した豊かで凝縮感のあるワインが生産され、長期熟成にも適した優れたヴィンテージとなりました。
シャンパーニュ
シャンパーニュ地方の1976年は、良いヴィンテージとなりました。一年を通じて高めの気温に恵まれ、ブドウは完熟しました。
シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエといった主要品種は、豊かな果実味を持ちながらも、良好な酸のバランスを保ったワインとなりました。酸は控えめですが、風味に満ちたリッチなスタイルのシャンパーニュが多く生産されました。
全体として、シャンパーニュの1976年は、豊かさとエレガンスを兼ね備えた、バランスの良いヴィンテージとなりました。
イタリア
1976年のイタリアは、地域によってヴィンテージの評価に差が見られましたが、全般的に平均的または困難な品質のワインが生産されました。全土で天候に恵まれず、非常に厳しい年となりました。夏場は暑く乾燥しており、一部で干ばつの影響が見られました。
北部イタリアでは、ピエモンテ州(バローロ、バルバレスコ)は、優れたヴィンテージではありませんでした。ネッビオーロは、暑さの影響を受け、凝縮感のあるワインが生産されましたが、品質にばらつきが見られました。ヴェネト州なども概ね平均的な出来でした。
中部イタリアでは、トスカーナ州(キャンティ・クラシコ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ)も全般的に平均的なヴィンテージでした。サンジョヴェーゼは、暑さの影響を受け、品質にばらつきが見られました。
南イタリアも、全般的には例外的なヴィンテージではありませんでした。イタリア全体として、1976年はスティルワインは低調な出来で、甘口ワインや酒精強化ワインの方が信頼度が高いとされています。地域によって品質に差が見られましたが、全般的に平均的または困難な品質のワインが生産されたヴィンテージでした。
スペイン
1976年のスペインは、全体として平均的または困難なヴィンテージと評価されています。地域によって品質に差が見られました。
リオハは、全般的に特筆すべきものではないヴィンテージでした。夏の気候が理想的ではなく、ブドウの成熟が不均一になったり、品質にばらつきが出たりしました。ワインは全般的に軽いスタイルで、長期熟成のポテンシャルは限られていました。
リベラ・デル・ドゥエロといったその他の主要地域についても、優れたヴィンテージではありませんでした。しかし、一部の情報源ではスペイン全体で良いワインが多く見られ、特にバランスの良い赤ワインが多く生まれたとも報告されています。リオハ、リベラ・デル・ドゥエロ、プリオラート、リベイロ、リアス・バイシャスなど主要産地での評価には差異があるようです。
全体として、スペインの1976年は、評価が分かれるヴィンテージであり、地域や生産者による品質の差が大きかったと考えられます。多くのワインは既に飲み頃を過ぎている可能性が高いです。
ドイツ
1976年のドイツは、全般的に優れたまたは傑出したヴィンテージと評価されています。特にリースリングから造られる甘口ワイン(ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ)は例外的な品質となりました。
生育期間を通して非常に暑く乾燥した夏が特徴でした。これにより、ブドウの糖度が高まりました。Q.m.P(当時の最高ランク)の割合が過去最高となりました。収穫期には理想的な条件が整い、貴腐(エーデルフォイレ)が広範囲に、かつ理想的に発生しました。モーゼル、ラインガウ、ナーエ、ファルツ、ラインヘッセンといった主要地域で、純粋な果実味、バランスの取れた酸、そして際立つミネラル感を備えた、複雑でエレガントなリースリングが生産されました。特に甘口ワインは、凝縮感とフィネスを兼ね備え、長期熟成のポテンシャルに優れています。
全体として、ドイツの1976年は、品質の面で例外的なヴィンテージであり、特に甘口リースリングは注目に値します。リースリング主体のワインは長期熟成にも耐える秀逸な仕上がりで、現在でも優れた状態で楽しめるものが多くあります。
アメリカ
1976年のアメリカ、特にカリフォルニア州は、全般的に満足のいくヴィンテージだったという評価が見られます。一部で課題はあったものの、品質の高いワインも生産されました。
カリフォルニア州では、生育期間を通して比較的安定した気候だった地域が多く、ブドウは健全に成熟しました。ナパ・ヴァレーやソノマ・カウンティといった主要地域では、カベルネ・ソーヴィニヨンやその他の品種で満足のいく品質のワインが生産されました。ワインは全般的にバランスが取れ、表現力豊かな果実味を持つものが見られました。過度に暑い年ではなかったため、フレッシュさも比較的保たれていました。一部の著名な生産者からは、長期熟成可能なワインも生産されたという情報も見られます。
オレゴン州やワシントン州といった他の地域についても、入手可能な情報は限られていますが、全般的には満足のいくヴィンテージだった地域もあった可能性があります。
オーストラリア
1976年のオーストラリアは、地域によってヴィンテージの出来にばらつきが見られましたが、全般的に良好な品質のワインが生産されました。特に南東部では、収穫期前に雨が降った地域もあったようですが、全体的な品質は満足から良好でした。
南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーやマクラーレン・ヴェール、クナワラといった地域では、全般的に良好なヴィンテージでした。シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンは、バランスが取れ表現力豊かなワインが生産されました。ヴィクトリア州や西オーストラリア州のマーガレット・リヴァーも満足のいくヴィンテージでした。特に、酒精強化ワインであるヴィンテージ・ポートに関しては、品質が高く評価されているものも見られます。
全体として、オーストラリアの1976年は、地域によって品質に差が見られましたが、多くの主要産地で満足から良好な品質のワインが生産されたヴィンテージでした。