1973年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス:ボルドー
1973年のボルドー地域では、春季から夏季にかけて多雨と低温が続きました。9月の雨も収穫に影響し、ブドウの成熟は十分ではありませんでした。赤ワインは軽めで酸味が強く、白ワインも酸が際立つ傾向がありました。
フランス:ブルゴーニュ
1973年のブルゴーニュ地域では、春の霜害と夏の低温多湿により、ブドウの成熟は不完全でした。収穫期の雨も影響し、赤ワインは色調が薄く、酸が強めで、タンニンはやや未熟な傾向が見られました。白ワインも酸味が立ち、長期熟成には向かない傾向がありました。
フランス:シャンパーニュ
1973年のシャンパーニュ地方では、春の冷涼な気候と夏の不安定な天候により、ブドウの成熟度にばらつきが見られました。シャルドネは糖度と酸度のバランスが確保され、ピノ・ノワールとピノ・ムニエは生産量が限られました。ヴィンテージ・シャンパーニュとしての生産は多くなく、非ヴィンテージのブレンドに使用されるケースが中心でした。
フランス:ロワール
1973年のロワール地域では、春季の霜と夏の不安定な天候がブドウの成熟に影響しました。ミュスカデやソーヴィニヨン・ブランは酸度が高い傾向があり、中部ロワールでは秋の収穫期に貴腐菌が発生し、一部で甘口ワインが造られました。カベルネ・フランは熟成が不十分な傾向が見られました。
フランス:アルザス
1973年のアルザス地方では、春の冷涼な気候と夏の温暖な期間が混在し、ブドウの成熟にばらつきがありました。リースリングは酸味と果実味のバランスを示しましたが、ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリは生産量が限られました。ヴァンダンジュ・タルディブの生産は限定的で、辛口スタイルが中心でした。
フランス:ローヌ
1973年のローヌ地域では、北部(コート・ロティ、エルミタージュなど)で春の低温と夏の不安定な天候によりシラーの熟度に差が生じました。南ローヌ(シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダス)では比較的安定しており、グルナッシュを中心としたブレンドが造られました。
イタリア
1973年のイタリアは、地域によって異なる結果となりました。トスカーナのキアンティとブルネッロ・ディ・モンタルチーノは比較的安定していましたが、ピエモンテのバローロとバルバレスコは雨の影響を受け、軽めのスタイルとなりました。ヴェネトやシチリアでは天候は概ね落ち着いており、平均的な品質が得られました。
スペイン
1973年のスペインでは、北部のリオハとリベラ・デル・ドゥエロで収穫期の雨が影響し、やや軽いワインが生産されました。南部のヘレスではシェリー用ブドウは平均的な品質で、カタルーニャのカバは酸のバランスがよいものが造られました。
ドイツ
1973年のドイツでは、モーゼル、ラインガウ、ラインヘッセンなどの主要産地で夏の雨量が多く、リースリングの熟度に影響がありました。収穫期の天候も安定せず、高品質のシュペートレーゼやアウスレーゼの生産は限定的でした。
ポルトガル
1973年のポルトガルでは、ドウロ渓谷でのポート用ブドウ栽培において春季の適度な降雨と夏季の温暖な気候が見られました。ヴィンテージ・ポートとしては宣言されず、主にLBV(レイト・ボトルド・ヴィンテージ)やタウニーポート向けのブドウとして使用されました。ヴィーニョ・ヴェルデやダン地方では酸味のある白ワインが生産されました。
アメリカ:カリフォルニア
1973年のカリフォルニアでは、春の湿潤な気候後に夏は温暖で安定していました。ナパとソノマで栽培されたカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネが、後の1976年「パリスの審判」でフランスワインとともにテイスティングされました。当時のカリフォルニアワイン産業は成長期にありました。
アメリカ:オレゴン
1973年のオレゴン州では、ウィラメット・ヴァレーを中心に冷涼な気候条件下でブドウが栽培されました。当時はオレゴンのワイン産業が発展初期段階にあり、生産量は限られていましたが、この年のピノ・ノワールは酸味と果実味のバランスが見られました。
オーストラリア
1973年のオーストラリアでは、南オーストラリアとヴィクトリア州で比較的安定した気候となりました。バロッサ・ヴァレーのシラーズやクナワラのカベルネ・ソーヴィニヨンが十分に熟し、果実味と酸のバランスを備えたワインが生産されました。
チリ
1973年のチリでは、中央渓谷を中心に安定した気候条件下でブドウが栽培されました。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが収穫されましたが、この年は9月の軍事クーデターにより一部の収穫作業や醸造過程に影響があったと報告されています。
ニュージーランド
1973年のニュージーランドでは、オークランド周辺とホークス・ベイが主要産地で、ミュラー・トゥルガウやカベルネ・ソーヴィニヨンなどが栽培されました。気候は比較的温暖で、当時は栽培技術と醸造設備が発展途上でした。ソーヴィニヨン・ブランの本格的な栽培はまだ始まっておらず、マールボロ地区でのワイン生産もごく限られていました。
南アフリカ
1973年の南アフリカでは、ステレンボッシュ、パール、コンスタンシアなどの主要産地で安定した気候条件が続きました。シュナン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノタージュが栽培され、輸出市場は制限されていたため、多くのワインは国内消費向けでした。醸造技術は現在ほど洗練されておらず、熟成による品質保持には課題がありました。
アルゼンチン
1973年のアルゼンチンでは、メンドーサを中心に安定した気候条件が見られました。マルベックが主要品種の一つとして栽培され、濃い色調のワインが生産されましたが、当時は量産重視の傾向があり、国際的な認知度は高くありませんでした。
総評
1973年は世界的に見ると、天候や地域によって結果が分かれたヴィンテージでした。ヨーロッパの一部地域では不安定な気候条件により収量やブドウの成熟度に影響が生じた一方、新世界の産地では比較的良好な条件が見られました。3年後の1976年に「パリスの審判」が開催され、カリフォルニアワインがフランスワインとともにテイスティングされたことでも知られる年です。
1973年ワイン ヴィンテージワイン
1973年ヴィンテージは、フランスのワインの二大生産地であるボルドー地方、ブルゴーニュ地方共に、収量は多く豊作ではあったものの、全体的に軽めのフルーティなワインになりました。
ボルドーでは雨の多かった6月以外は天候に恵まれ豊作となりましたが、一般的には軽いワインが大量に出来た年で、ワイン市場は落ち込みました。
ブルゴーニュは7月中旬の突然の豪雨にコートドールで被害が出ました。赤ワインに比べ白ワインの方が出来がよく、香りが高く魅力的なワインも出来ました。