2013年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
2013年はフランス全土で冷涼かつ雨の多い春が開花と結実を妨げ、収量を大幅に減少させた挑戦的なヴィンテージだった。夏は概して不安定で日照不足、加えて収穫期の雨が完熟を難しくした。赤ワインはボディが軽めで酸が高い傾向があるものの、白ワインや一部地域では高品質なワインが生産された。
ボルドー
ボルドーにとって2013年は非常に困難な年で、春の悪天候による結実不良が歴史的な低収量を招き、冷涼な生育期と収穫期の雨が完熟を阻んだ。赤ワインは総じて軽めで酸が際立ち、長期熟成には向かないが、厳格な選果を行った生産者はエレガントで早期消費向きのワインを造った。辛口白ワインと甘口白ワインは成功を収めた。
メドック / 左岸: カベルネ・ソーヴィニヨンは完熟が難しくワインは軽め。
- サン・テステフ: タンニンがやや未熟で凝縮感に欠ける傾向。
- ポイヤック: トップシャトーも軽めで果実味が控えめ。
- サン・ジュリアン: エレガントだが厚みに欠け、早飲み向き。
- マルゴー: 繊細だがタンニン成熟が課題。
グラーヴ / ペサック・レオニャン: 赤はメドック同様に苦戦したが、辛口白ワインは高酸でフレッシュ、シャトー・オー・ブリオン・ブランなどが高品質。
サン・テミリオン / ポムロール / 右岸: メルローも結実不良で軽めのワインが多いが、生産者によって品質差が大きい。
ソーテルヌ / バルサック: 収穫後半の湿度が貴腐菌の発生を促し、シャトー・ディケムなどが酸と糖度のバランスに優れた長期熟成型の甘口ワインを生産。
ブルゴーニュ
春の寒さと雨、雹害(特にコート・ド・ボーヌ)で収量が激減したが、9月後半の好天により健全果が確保され、赤白ともに低収量ゆえの凝縮感と鮮明な酸を併せ持つクラシックなスタイルとなった。
コート・ド・ニュイ: ピノ・ノワールは赤系果実のアロマと高い酸が特徴。色調はやや淡いが、低収量区画では想像以上の凝縮感と張りがあり、中期熟成も期待できる。
- ジュヴレ・シャンベルタン: 上位畑は透明感ある果実味ときめ細かなタンニン。
- シャンボール・ミュジニー: フィネスが際立ち、余韻が長い。
- ヴォーヌ・ロマネ: トップ畑はテロワール由来の気品と骨格が感じられる。
コート・ド・ボーヌ: 雹害で収量は少ないが、白ワイン(シャルドネ)は高品質でミネラル感が際立ち長期熟成ポテンシャルが高い。
- コルトン・シャルルマーニュ: 密度と張りを備え秀逸。
- ムルソー: ペリエールなどで凝縮感と緊張感を両立。
- ピュリニー・モンラッシェ: モンラッシェ等が緊密でエネルギッシュ。
シャブリ: 高い酸と火打石のミネラル感を持つクラシックなスタイルで、熟成能力が高い。
ローヌ
北部が南部より成功した。冷涼な気候がエレガンスを強調。
北部ローヌ: シラーは良好?非常に良好で、アロマティックかつ骨格のあるワイン。
- コート・ロティ: フローラルやスパイス香、熟成能力が高い。
- エルミタージュ: クラシックで複雑。
- コルナス: 抑制的だが堅牢。
- コンドリュー: ヴィオニエはフレッシュで華やか。
南部ローヌ: グルナッシュは完熟に苦労し軽め。シラーやムールヴェードル主体のキュヴェが安定。
- シャトーヌフ・デュ・パプ: フレッシュで飲みやすいが厚みに欠ける傾向。
ロワール
冷涼な年だが白ワインは高品質。赤ワインは完熟が課題。
ペイ・ナンテ: ミュスカデはフレッシュでミネラル豊富。
アンジュー・ソミュール / トゥーレーヌ: シュナン・ブランは酸とミネラルが際立つ。
- ヴーヴレ / モンルイ: 高い酸で長期熟成向き。
- サヴニエール: 力強く複雑。
- シノン / ブルグイユ: カベルネ・フランは軽めで青さが出やすい。
サントル・ニヴェルネ:
- サンセール / プイィ・フュメ: ソーヴィニヨン・ブランは鮮烈な酸と柑橘、火打石のニュアンス。
シャンパーニュ
冷涼な生育期と遅い収穫が特徴の高品質ヴィンテージ。高い酸と優れた熟度(特にシャルドネ)がフレッシュで長期熟成能力の高いシャンパーニュを生み、多くのメゾンがヴィンテージ・シャンパーニュをリリース。
アルザス
冷涼で挑戦的な年。リースリングはエレガンスとミネラル感を発揮したが、ゲヴュルツトラミネールやピノ・グリは完熟が難しかった。甘口ワインの生産は限定的。
イタリア
ピエモンテとトスカーナで高品質なクラシックヴィンテージ。
ピエモンテ:
- バローロ / バルバレスコ: ネッビオーロは長く冷涼な生育期でエレガントかつアロマティック。高い酸と洗練されたタンニンで長期熟成向き。
トスカーナ:
- ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ: サンジョヴェーゼは複雑なアロマと力強いタンニン。
- キャンティ・クラシコ: フレッシュな酸と純粋な果実味でリゼルヴァは熟成向き。
- スーパートスカン: ボルゲリなどでエレガントかつ熟成能力のあるワイン。
スペイン
春の冷涼で生育が遅れたが、夏?秋は安定しフレッシュで酸の高いスタイル。
リオハ: テンプラニーリョは赤系果実と穏やかなタンニンでエレガント。
リベラ・デル・ドゥエロ: ティント・フィノはフレッシュな酸としっかりした骨格。
プリオラート: ガルナッチャとカリニェナはミネラル感と酸のバランスが良い。
リアス・バイシャス: アルバリーニョはフレッシュでミネラル豊富。
ドイツ
冷涼で降雨も多く、収量は小さめ。酸が高く、貴腐の影響を受けた区画もあり、選果が重要。甘口ワインは高品質例があるが総量は少なく、辛口は酸が際立つものも。
- モーゼル / ラインガウ / プファルツ: リースリングのアウスレーゼ級は高い酸と凝縮感、辛口はややシャープな傾向。
アメリカ(カリフォルニア)
温暖で乾燥した安定した天候が続き、早い収穫が高品質をもたらした優良ヴィンテージ。
ナパ・ヴァレー:
- カベルネ・ソーヴィニヨン: 濃厚で凝縮感が高く長期熟成向き。ラザフォード、オークヴィルが特に成功。
- シャルドネ: 熟度と酸のバランスが良好。
ソノマ・カウンティ:
- ピノ・ノワール: ソノマ・コーストで豊かな果実味と複雑さ。
- シャルドネ: 冷涼地域で高品質。
- カベルネ・ソーヴィニヨン: アレクサンダー・ヴァレーで力強い。
- ジンファンデル: ドライ・クリーク・ヴァレーで豊潤。
オーストリア
ヴァッハウやカンプタールでグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングが高品質。高い酸とミネラル感、果実味のバランスが秀逸。
ポルトガル
2013年はクラシック・ヴィンテージの宣言は行われず、主にシングル・キンタのヴィンテージ・ポートがごく少量造られた。収穫期の雨で選果が鍵となり、生産量は大幅に減少したが、早期に収穫されたロットはフレッシュな果実味と良好な構造を備える。