1999年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
1999年のボルドーは、春の天候不順や9月下旬の雨により、難しい年となりました。特にメドック地区では、カベルネ・ソーヴィニヨンの成熟がやや不十分で、ワインの品質に影響が出たものもあります。8月初旬には約75mmの雨が降り、9月5日には激しい雹がサン・テミリオンを中心に多くのブドウ畑を襲いました。9月はほぼ全期間雨が続き、これがブドウを希釈し、ワインの濃縮感に影響しました。
全体的に、比較的早飲みタイプのワインが多いとされますが、右岸(サン・テミリオン、ポムロール)やグラーヴ地区、また優れた生産者の手掛けたものは熟成のポテンシャルも秘めています。特にシャトー・オーゾンヌ(サン・テミリオン)とシャトー・パルメ(マルゴー)は非常に優れたワインを生産しました。
注目のシャトーと評価
- シャトー・ラフィット・ロートシルト(ポイヤック)- 上品で果実味あふれる
- シャトー・マルゴー - エレガントで深みのある味わい
- シャトー・ラトゥール(ポイヤック)- 力強さと熟成可能性を持つ
- シャトー・オー・ブリオン(ペサック・レオニャン)- バランスの良い構成
- シャトー・シュヴァル・ブラン(サン・テミリオン)- フルーティでエレガント
- シャトー・ラ・コンセイヤント(ポムロール)- 複雑味とシルキーなタンニン
- シャトー・ラ・グラーヴ・ア・ポムロール - 良い値打ちを持つ優良ワイン
メドック地区の主要村
- サン・テステフ - やや軽めながらエレガント
- ポイヤック - 力強さを持ち、一部は長期熟成可能
- サン・ジュリアン - バランスの取れた中庸な仕上がり
- マルゴー - 比較的成功したエリア、優雅さがある
ブルゴーニュ
ブルゴーニュでは、1999年は赤白ともに素晴らしいヴィンテージとなりました。春は一部地域で霜の影響がありましたが、夏は比較的温暖で収穫期の天候も良好でした。コート・ド・ボーヌがコート・ド・ニュイよりもわずかに有利な条件となり、早期に収穫されたため9月末の雨をほぼ回避できました。
特にピノ・ノワールは素晴らしい成熟度を示し、エレガントでバランスが取れ、長期熟成にも向く偉大なヴィンテージと評価されています。シャルドネも同様に、酸味と果実味のバランスが良い高品質なワインが多く生産されました。白ワインには早期酸化現象が見られる場合もありますが、赤ワインは期待通りの素晴らしい品質を維持しています。
コート・ド・ニュイの主要村と特徴
- ジュヴレ・シャンベルタン - 力強く濃厚、タンニンがしっかりしている
- シャンボール・ミュジニー - 芳醇でエレガント、繊細なアロマ
- ヴォーヌ・ロマネ - 複雑味があり洗練された仕上がり
- ニュイ・サン・ジョルジュ - 力強さと酸味のバランスが良い
- モレ・サン・ドニ - スパイシーで花のようなアロマが特徴
コート・ド・ボーヌの主要村と特徴
- ボーヌ - フルーティでバランスのとれた味わい
- ポマール - タンニンがしっかりしているが熟成で柔らかくなる
- ヴォルネイ - エレガントで香り高い
- メルソー - 濃厚でナッツの風味を持つ白ワイン
- シャサーニュ・モンラッシェ - ミネラル感と繊細さが調和
- ピュリニー・モンラッシェ - 精緻な酸とミネラル感が特徴
特に優れたグラン・クリュ畑
- ル・モンラッシェ - 白ワインの頂点を示す深みと複雑さ
- シュヴァリエ・モンラッシェ - エレガントで透明感のある味わい
- バタール・モンラッシェ - 力強く濃厚なスタイル
- シャンベルタン - パワフルながらバランスが取れている
- ラ・ターシュ - 複雑なアロマと絹のような舌触り
- ロマネ・コンティ - 究極の繊細さと複雑さを併せ持つ
- リシュブール - 豊かな果実と深い構造を持つ
- クロ・ヴージョ - 温かみのある豊かな風味
ローヌ
ローヌ地方では、北部と南部で状況が異なりました。北部では、1999年は例外的に良質なヴィンテージと評価されています。収穫量は少なめでしたが、シラーが良好な成熟度を示し、力強く凝縮感のある優れたワインが生産されました。特にエルミタージュとコート・ロティでの成功が顕著です。
南部では、1998年に続き良好な年と評価され、暑い夏の影響を受けた力強く豊かなワインが生産されましたが、一部では品質にばらつきも見られました。シャトーヌフ・デュ・パプでは、グルナッシュの成熟が良好で、リッチで凝縮感のあるワインが生まれました。
北部ローヌの主要アペラシオン
- コート・ロティ - 優雅でスパイシー、複雑なアロマを持つ
- エルミタージュ - 濃厚で力強く、長期熟成のポテンシャルがある
- コルナス - 濃厚で野性的な風味が特徴
- サン・ジョセフ - フルーティでアクセスしやすい味わい
- クローズ・エルミタージュ - フレッシュで果実味があふれる
南部ローヌの主要アペラシオン
- シャトーヌフ・デュ・パプ - 熟した果実と豊かなスパイスの風味
- ジゴンダス - 力強く濃厚な味わい
- ヴァケラス - バランスのとれた果実味とタンニン
- リラック - フルーティでアクセスしやすい
- コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ - 良いコストパフォーマンスを持つ
注目の生産者
- ギガル(北部)- 卓越した品質の「ラ・ラ」などのトップキュヴェ
- シャプティエ(北部)- 秀逸なエルミタージュのシリーズ
- ジャブレ(北部)- バランスの取れたエレガントなワイン
- シャトー・ド・ボーカステル(南部)- 複雑味と熟成ポテンシャルを持つ
- ドメーヌ・デュ・ヴュー・テレグラフ(南部)- 凝縮感とリッチな味わい
イタリア
ピエモンテ
ピエモンテでは、春の霜や夏の雹、雨など天候不順に見舞われ、ネッビオーロの成熟が遅れました。9月の好天により何とか品質は確保されましたが、収穫時期の選定に苦労し、ワインの品質にはばらつきが見られました。それでも、優れた生産者はエレガントでクラシックなワインを造り出しており、特にバローロは20年以上経過した今もなお素晴らしい品質を保っているものがあります。
主要地域とワイン
- バローロ - 最も評価が高く、複雑さと熟成能力に優れる
- バルバレスコ - エレガントかつ力強い、一部は非常に優れた品質
- ランゲ・ネッビオーロ - フレッシュで早めに楽しめるスタイル
- バルベーラ・ダルバ - フルーティで豊かな酸を持つ
- ドルチェット - 軽めで親しみやすい果実味
バローロの主要コミューン
- ラ・モッラ - エレガントでデリケートな風味
- バローロ - バランスの取れた典型的なスタイル
- カスティリオーネ・ファレット - 力強く濃厚
- セッラルンガ・ダルバ - タンニンが豊富で長期熟成向き
- モンフォルテ・ダルバ - 力強さと深みがある
注目の生産者
- ジャコモ・コンテルノ - 伝統的手法による長期熟成向きワイン
- ブルーノ・ジャコーザ - エレガントで洗練されたスタイル
- ガヤ - 現代的アプローチによる精緻なワイン
- バルトロ・マスカレッロ - 古典的かつバランスのとれた味わい
- ルチアーノ・サンドローネ - リッチで濃厚なスタイル
トスカーナ
トスカーナでは、1999年は良質なヴィンテージとなりました。4月から6月にかけての温暖で晴れた天候により、早期の開花と結実がもたらされました。8月末の雨は、非常に暑く乾燥した9月を乗り切るのに役立ちました。収穫は例年より最大2週間早く始まり、モンタルチーノでは9月21日までに終了しました。収穫されたブドウは非常に健全で熟度が高く、高い糖度を持っていました。生産量は約10%増加しました。
特にブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワインは高く評価され、キアンティ・クラシコも1999年には非常に成功しました。若いうちは明るい果実味と良い構造を持ち、調和のとれた熟成を遂げています。沿岸地域のスーパータスカンも非常に良質で、特にボルゲリは素晴らしい年でした。
主要地域とワイン
- キアンティ・クラシコ - 熟した果実とバランスの良い酸味
- ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ - 深みと複雑さを持ち、長期熟成が可能
- ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノ - リッチで力強い味わい
- ボルゲリ - 特に素晴らしい品質、カベルネやメルロが成功
- スーパータスカン - 濃厚で力強く、長期熟成のポテンシャルがある
キアンティ・クラシコの主要コミューン
- グレーヴェ・イン・キアンティ - 伝統的で典型的なスタイル
- カステリーナ・イン・キアンティ - フルーティで親しみやすい
- ラッダ・イン・キアンティ - エレガントで繊細な風味
- ガイオーレ・イン・キアンティ - 力強くスパイシー
- パンザーノ - バランスの取れた中庸なスタイル
注目の生産者
- テヌータ・サン・グイド(サッシカイア)- 卓越したボルゲリ
- オルネライア - リッチでパワフルな味わい
- ビオンディ・サンティ - クラシックなブルネッロ
- カステッロ・バンフィ - 現代的なブルネッロ
- フォンテルートリ - エレガントなキアンティ・クラシコ
- アンティノリ - 革新的なスーパータスカン
スペイン
リオハ
リオハでは、夏の降雨により、テンプラニーリョの成熟が遅れがちで、収穫時期の選定が重要となりました。早めに収穫した場合は酸味が強く果実味に乏しい傾向がありましたが、収穫を遅らせて完熟を待った生産者は、よりバランスの取れたワインを生産しました。生産者による差が出やすい年です。
主要地区
- リオハ・アルタ - エレガントでバランスの良いワインを生産
- リオハ・アラベサ - より凝縮感があり力強い
- リオハ・バハ - 熟した果実味が特徴
リベラ・デル・ドゥエロ
リベラ・デル・ドゥエロでは、夏の降雨が少なく乾燥した好天に恵まれ、テンプラニーリョの成熟が良好でした。力強く、果実味豊かで凝縮感のあるワインが生産され、長期熟成にも向く優れたヴィンテージとされています。
主要生産地
- ペサケラ・デ・ドゥエロ - 力強く濃厚なワイン
- バルブエナ・デ・ドゥエロ - エレガントなスタイル
- ロア - フルーティで早飲みに向く
アメリカ
カリフォルニア
カリフォルニアでは、春に一部地域で霜の影響がありましたが、夏は温暖で乾燥しており、収穫期の天候も良好でした。カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネをはじめ、多くの品種が良好な成熟度を示し、バランスの取れた高品質なワインが生産された優良ヴィンテージです。
主要地域
- ナパ・ヴァレー - 特にカベルネ・ソーヴィニヨンが秀逸
- ソノマ - ピノ・ノワールとシャルドネが成功
- サンタ・バーバラ - シラーとピノ・ノワールが注目
オーストラリア
バロッサ・ヴァレー
バロッサ・ヴァレーでは、温暖で乾燥した夏に恵まれ、シラーズの成熟が非常に良好でした。力強く、スパイシーで凝縮感のあるワインが生産され、長期熟成にも向く素晴らしいヴィンテージとされています。
ハンター・ヴァレー
ハンター・ヴァレーでは、夏の降雨が多く、特にセミヨンにとっては難しい年となりました。酸味が強く、果実味が不足しているワインが多く見られました。
1999年ワイン ヴィンテージワイン
1999年は地域によって評価が異なりますが、特にブルゴーニュの赤ワインにおいては豊作で、質量共に素晴らしく偉大なグレートヴィンテージとなりました。他のフランスの地域では、ボルドーのように難しい面もありました。
ボルドーは生産者によって質的なばらつきが見られる年でした。9月下旬の雨が、メルローに比べ遅摘みのカベルネ・ソーヴィニヨンに影響を与えたことが要因の一つです。偉大な2000年のミレニアムヴィンテージの影に隠れがちで、品質に対して比較的リーズナブルな価格で取引されることがあります。
ローヌ南部は1998年に引き続き、全体的に良好な年と評価されています。