1989年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
ボルドー
1989年は20世紀後半を代表する偉大なヴィンテージ。穏やかな冬、湿潤な春、5月からの急速な天候回復で開花は早く均一。暑く乾燥した夏がブドウの成熟を加速し、8月末からの早い収穫で豊作。カベルネ・ソーヴィニヨン(左岸:Chateau Latour、Margaux)とメルロー(右岸:Chateau Petrus、Cheval Blanc)がリッチで柔らかなタンニン、長期熟成に適したワインを生んだ。ソーテルヌ(Chateau d’Yquemなど)は貴腐菌の発生が理想的で、リッチでバランス良好。2025年現在、多くが飲み頃のピーク。
ブルゴーニュ
春の霜害は軽微で、暑く乾燥した夏がブドウをよく熟させた。赤ワイン(ピノ・ノワール)は果実味豊かでタンニンと酸がしっかり、長期熟成向き(例: Domaine de la Romanee-Conti、Armand Rousseau)。白ワイン(シャルドネ)は濃厚でバランス良好(Montrachet、Corton-Charlemagne)だが、シャブリは若干早熟。2025年現在、トップ生産者のワインはまだ良好。
ローヌ
北部(エルミタージュ、コート・ロティ)のシラーは力強く凝縮感あり(Chapoutier、Guigal)。南部(シャトーヌフ・デュ・パプ)のグルナッシュは果実味豊かでバランス良好(Chateau de Beaucastel)。暑く乾燥した夏が成功を支え、長期熟成に適する。
ロワール
ソーヴィニヨン・ブラン(サンセール、プイィ・フュメ:Didier Dagueneau)はフレッシュでエレガント。シュナン・ブラン(ヴーヴレ、モンルイ:Domaine Huet)の辛口・甘口は酸と果実味の調和が秀逸。特に甘口は2025年現在も良好。
イタリア
1989年はピエモンテ(バローロ、バルバレスコ:Giacomo Conterno、Bruno Giacosa)とトスカーナ(キアンティ、ブルネッロ:Antinori、Biondi-Santi)が優れたヴィンテージ。暑く乾燥した夏が果実の成熟を促し、力強く複雑なワインを生んだ。バローロは伝説的で、2025年現在、複雑な二次・三次アロマが楽しめる。
ドイツ
1989年は非常に優れたヴィンテージ。リースリング(モーゼル:Egon Muller、Joh. Jos. Prum)は豊かな果実味とバランスの良い酸。特に甘口(アウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼ)が高評価。ラインガウも良好。2025年現在、飲み頃のピーク。
スペイン
1989年はリオハ(La Rioja Alta、CVNE)とリベラ・デル・ドゥエロ(Vega Sicilia)はテンプラニーリョ主体の赤ワインが構造と果実味で高評価。寒い冬、暖かい春、高温の夏が理想的な条件。2025年現在も飲み頃の長期熟成向きワインが多い。
アメリカ
1989年は難しい年。春から夏は安定したが、収穫期の雨で品質にムラ。カリフォルニアのナパ(Opus One、Dominus)やソノマ(Ridge)の優良生産者、シャルドネ(Kistler)は高品質だが、全体的には平均的。1985年や1990年に比べ劣る。
オーストラリア
1989年は全体的に平凡。バロッサ・ヴァレー(Penfolds Grange、Henschke Hill of Grace)のシラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンが良好だが、他の地域(マーガレット・リヴァーなど)は品質にばらつき。収穫期の不安定な気候が影響。
ニュージーランド
1989年は安定した気候で良質なワイン。マールボロのソーヴィニヨン・ブラン(Cloudy Bay)は爽やかな酸と香りで国際的評価を確立。ホークス・ベイのカベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワール(Te Mata Coleraine)は果実味と酸の調和が良好。
ポートワイン
1989年は公式なヴィンテージ宣言なし。一部の生産者(Taylor’s、Fonseca)のシングル・キンタ・ポートが良好だが、1985年や1994年に比べ劣る。2025年現在、熟成が進み楽しめる。
シャンパーニュ
1989年は卓越したヴィンテージ。暑く乾燥した夏がブドウを熟させ、豊かな果実味と構造を持つシャンパーニュ(Krug Clos du Mesnil、Dom Perignon、Bollinger R.D.)が生まれた。プレステージ・キュヴェが高評価で、2025年現在も飲み頃。
ヴィンテージ評価一覧
地域 |
評価・特徴 |
ボルドー |
20世紀後半を代表する偉大な年。左岸・右岸ともリッチで長期熟成型。 |
ブルゴーニュ |
果実味豊かで長期熟成型。トップ生産者は傑出。 |
ローヌ |
北ローヌのシラー、南ローヌのグルナッシュが凝縮感で長期熟成向き。 |
ロワール |
サンセール、ヴーヴレの酸と果実味の調和。甘口が高評価。 |
イタリア |
バローロが伝説的。トスカーナも優れ、長期熟成型。 |
ドイツ |
リースリングの甘口が傑出。モーゼルが高評価。 |
スペイン |
リオハ、リベラ・デル・ドゥエロが構造と果実味で長期熟成型。 |
カリフォルニア |
収穫期の雨で平均的。優良生産者のみ高品質。 |
オーストラリア |
バロッサのシラーズが良好。全体的に平凡。 |
ニュージーランド |
マールボロのソーヴィニヨン・ブラン、ホークス・ベイの赤がバランス良好。 |
シャンパーニュ |
卓越したヴィンテージ。豊かな果実味と複雑さ。 |
ポートワイン |
公式宣言なし。一部のシングル・キンタ・ポートが良好。 |
1989年ワイン ヴィンテージワイン
1989年ヴィンテージのボルドーは、ここ数十年のグレート・ヴィンテージと称される1990年の前の年となり、影が薄いものの非常に素晴らしい出来の年。
理想的な天候に恵まれたものの、収穫の時期を見極めるのが難しい年でした。しかし、技術力や経験の豊かな一流シャトーは
収穫後もしっかりと選果を行うなど、素晴らしいワイン造りを行うことができたと言います。
特徴としてはコクのある甘美な果実味とふくよかなボディ、全体的のバランスのよさが魅力。早くから楽しむことも出来ましたが、熟成された現在でも評価は上昇しているヴィンテージのひとつ。右岸のポムロールなどは特に成功した地区。ソーテルヌでも理想的な貴腐菌の付き方をし、素晴らしいワインが数多く生産されました。
ブルゴーニュは特に赤ワインが豊作の年。エキス分が高く、しっかりとしたボディが特徴的。
特にボジョレーやシャブリ、マコネなどが高い評価を受けています。アルコール度も高く、長熟向きのワインが多いようです。
シャンパーニュ、ローヌ、ドイツなども秀逸な出来。
カリフォルニアでは厳しい天候に加え10月の大地震の影響を受けたようです。