1970年のヴィンテージ作柄・出来・評価
フランス
1970年のフランスは、多くの主要ワイン産地で優れたヴィンテージとなりました。特にボルドーでは、理想的な気候条件に恵まれ、長期熟成ポテンシャルを持つクラシックなスタイルのワインが数多く生産されました。ブルゴーニュやローヌも良好な出来栄えで、バランスのとれたワインが多く生まれています。
ボルドー
1970年のボルドーは、特に赤ワインにとって優れた、そして量にも恵まれた偉大なヴィンテージとして歴史に刻まれています。長期熟成のポテンシャルを持つクラシックなスタイルのワインが数多く生産され、現在でも良好な状態で楽しめるものが見られます。生育期間は比較的順調で、乾燥した暖かい夏と、理想的な条件下での収穫が品質の高さに繋がりました。戦後初の大豊作として知られています。
メドック (Medoc) / 左岸: 主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンが素晴らしく成熟しました。ワインは濃い色合いを持ち、豊かな果実味、複雑なアロマ、そしてしっかりとした洗練されたタンニンを備えています。
- ポイヤック (Pauillac): シャトー・ラトゥール、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラフィット・ロートシルトなどの著名シャトーが高品質なワインを生産しました。
- サン・テステフ (Saint-Estephe): シャトー・コス・デストゥルネル、シャトー・モンローズなどがしっかりとした骨格のワインを生み出しました。
- サン・ジュリアン (Saint-Julien): シャトー・デュクリュ・ボーカイユ、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズなどが優れた品質のワインを造りました。
- マルゴー (Margaux): シャトー・マルゴー、シャトー・パルメなど主要シャトーでも高評価のワインが生まれました。
これらのワインは、若いころは力強さがありましたが、時を経て優雅さと複雑さを増し、美しく熟成しています。
グラーヴ / ペサック・レオニャン (Graves / Pessac-Leognan): シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンをはじめとするシャトーが優れた赤ワインと、品質の高い辛口白ワインを生産しました。辛口白ワインも、層の豊かな複雑な特徴を持つものが注目されます。
サン・テミリオン / ポムロール (Saint-Emilion / Pomerol) / 右岸: メルローが良好に成熟し、優れた品質の赤ワインが生産されました。ワインは豊かな果実味とビロードのような質感を持ち、右岸らしい表現力を備えています。サンテミリオンの石灰質台地や、ポムロールの優れたテロワールでは、凝縮感とフィネスを兼ね備えたワインが生まれました。シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・オーゾンヌ(サンテミリオン)、シャトー・ペトリュス、シャトー・ラフルール(ポムロール)といったトップシャトーは、いずれも傑出したワインを生産し、長期熟成のポテンシャルを示しました。右岸全体として、左岸と同様に成功したヴィンテージでした。
ソーテルヌ / バルサック (Sauternes / Barsac): 甘口ワインにとっても、1970年は全般的に良好なヴィンテージでした。貴腐菌(ボトリティス・シネレア)が満足のいく程度に発生し、豊かな風味とバランスの取れた酸を持つ甘口ワインが生産されました。特別なレベルのものは限定的かもしれませんが、品質の高いものが広く見られました。
ブルゴーニュ
1970年のブルゴーニュは、全体として良好なヴィンテージとして評価されています。量は豊富ではありませんでしたが、品質の高い赤ワインと白ワインが生産されました。比較的安定した生育期間が、ブドウの健全な成熟に貢献しました。前後の1969年や1971年と比べるとやや控えめな評価です。
コート・ド・ニュイ (Cote de Nuits): 赤ワイン(ピノ・ノワール)は、ピュアで表現力豊かな果実味と、バランスの取れた構造が特徴です。タンニンは細かく、エレガントな特徴を持ちます。
- ジュヴレ・シャンベルタン (Gevrey-Chambertin): 個性的なワインが生産されました。
- モレ・サン・ドニ (Morey-Saint-Denis): バランスの良いピノ・ノワールが見られます。
- シャンボール・ミュジニー (Chambolle-Musigny): 繊細でエレガントなスタイルのワインが多く生産されました。
- ヴージョ (Vougeot): クロ・ド・ヴージョなど、典型的なテロワールを表現したワインが見られます。
- ヴォーヌ・ロマネ (Vosne-Romanee): ロマネ・コンティ、ラ・ターシュ、リシュブールなどの著名な畑でも、テロワールの個性が表現されました。
- ニュイ・サン・ジョルジュ (Nuits-Saint-Georges): クラシックなスタイルのワインが生産されました。
過度な力強さはありませんが、複雑さとフィネスを兼ね備えたものが成功しています。長期熟成のポテンシャルも持っています。
コート・ド・ボーヌ (Cote de Beaune): 赤ワインも全般的に良好な出来でした。アロース・コルトン(コルトン)、ボーヌ、ポマール、ヴォルネーといった村々で、しなやかで表現力豊かな赤ワインが見られます。バランスの取れた酸と果実味が特徴です。
白ワイン (Chardonnay): 赤ワインと同様に良好な品質でした。フレッシュさと複雑さを兼ね備え、バランスの取れた酸を持つワインが生産されました。
- ムルソー (Meursault): 豊かな果実味とミネラル感のバランスが取れたワインが見られます。
- ピュリニー・モンラッシェ (Puligny-Montrachet): モンラッシェ、シュヴァリエ・モンラッシェなどでは、ミネラル感と果実味のバランスが良いワインが生産されました。
- シャサーニュ・モンラッシェ (Chassagne-Montrachet): 同様に、バランスの取れた白ワインが見られます。
シャブリ (Chablis): 特徴的なミネラル感とさわやかな酸を持つ白ワインが生産されました。全体として、ブルゴーニュの1970年は、クラシックでバランスの取れたスタイルのワインが生まれたヴィンテージと言えます。
ローヌ
1970年のローヌ地方は、北部・南部ともに全般的に良好なヴィンテージでした。品質の高いワインが広く生産されました。天候に恵まれ、バランスの取れた赤ワインが多く造られました。
北部ローヌ (Northern Rhone): 主要品種であるシラーにとって成功した年でした。力強く表現力豊かな赤ワインが生産され、凝縮感と複雑さを備えています。
- エルミタージュ (Hermitage): 深みのある色合い、豊かな果実味、そしてしっかりとしたタンニンを持つワインが見られました。
- コート・ロティ (Cote-Rotie): 同様に優れた品質のワインが生産されました。
- クローズ・エルミタージュ (Crozes-Hermitage): バランスの良いワインが多く見られます。
- サン・ジョセフ (Saint-Joseph) / コルナス (Cornas): 力強いシラーワインが生産されました。
長期熟成のポテンシャルも持っています。ヴィオニエから造られるコンドリューなども良好な出来でした。
南部ローヌ (Southern Rhone): 全般的に良好なヴィンテージでした。グルナッシュを主体とする赤ワインは、豊かな果実味と構造を持ち、表現力に富んでいます。
- シャトーヌフ・デュ・パプ (Chateauneuf-du-Pape): 品質の高いワインが生産され、複雑さと深みを持つものが見られます。
- ジゴンダス (Gigondas) / ヴァケラス (Vacqueyras): 全般的には満足のいく出来でした。
全体として、ローヌの1970年は、力強さと表現力豊かな果実味が特徴のヴィンテージと言えます。
ロワール
1970年のロワール地方は、全体として満足のいくヴィンテージでした。前半の気温の低さでブドウの成熟が遅れたものの、後半は晴天に恵まれ、平均点以上のワインが仕上がりました。地域やスタイルによって品質に差は見られましたが、良好なワインも生産されました。
サントル・ニヴェルネ (Centre-Nivernais):
- サンセール (Sancerre) / プイィ・フュメ (Pouilly-Fume): ソーヴィニヨン・ブランの産地であるこれらの地域では、フレッシュでさわやかな白ワインが生産されました。ミネラル感も比較的よく表現されました。
アンジュー・ソミュール (Anjou-Saumur) / トゥーレーヌ (Touraine):
- ヴーヴレ (Vouvray) / モンルイ・シュール・ロワール (Montlouis-sur-Loire): シュナン・ブランの産地であるこれらの地域では、辛口、半辛口、甘口のいずれのスタイルも満足のいく出来でした。一部で品質の高いものが生産されました。
- シノン (Chinon) / ブルグイユ (Bourgueil): カベルネ・フランを主体とするこれらの赤ワイン産地では、表現力豊かな赤系果実の特徴を持つワインが生産されました。
全体として、ロワールの1970年は、傑出したヴィンテージではありませんでしたが、楽しめるワインが生産された年でした。
アルザス
アルザスの1970年は、前半の冷涼な気候の影響を受けつつも、後半の好天によりリースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカなどで平均点以上の辛口白ワインが造られました。フレッシュでバランスのとれた酸味と果実味を持つワインが多く見られました。
シャンパーニュ
1970年のシャンパーニュは、しっかりとした味わいで上出来と評価されています。酸と果実味のバランスが良く、複雑さと熟成能力を備えたヴィンテージ・シャンパーニュが多く生産されました。
イタリア
1970年のイタリアは、全体として良好なヴィンテージと評価されています。特に北部や中部では品質の高いワインが生産されました。
ピエモンテ (Piedmont): 優れたヴィンテージでした。特にバローロ (Barolo) やバルバレスコ (Barbaresco) のネッビオーロは理想的に成熟し、凝縮感、複雑さ、そして素晴らしい構造を持つ、長期熟成に非常に適したワインが生産されました。これらのワインは、現在でも多くのものが優れた状態で楽しめます。主要な村にはラ・モッラ (La Morra)、モンフォルテ・ダルバ (Monforte d'Alba)、セッラルンガ・ダルバ (Serralunga d'Alba)、バローロ村 (Barolo)、カスティリオーネ・ファレット (Castiglione Falletto) などがあります。
トスカーナ (Tuscany): 優れたヴィンテージでした。キャンティ・クラシコ (Chianti Classico) やブルネッロ・ディ・モンタルチーノ (Brunello di Montalcino) のサンジョヴェーゼは十分に成熟し、構造と複雑さを兼ね備えた、クラシックなスタイルのワインが生産されました。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、特に品質が高く評価されています。ボルゲリ (Bolgheri) など沿岸部でも良好なワインが生産されました。
南イタリア: 地域によって状況は異なりますが、全般的には満足のいくヴィンテージでした。
スペイン
1970年のスペインは、全体として良好なヴィンテージと評価されています。品質の高い赤ワインが生産されました。生産量こそ少ないものの、多くの地域で高い評価を受けています。
リオハ (Rioja): 優れたヴィンテージでした。テンプラニーリョは理想的に成熟し、力強く構造のしっかりした、長期熟成に非常に適した赤ワインが生産されました。これらのワインは、豊かな果実味と複雑なアロマを備え、クラシックなリオハの特徴を示しています。リオハ・アルタ (Rioja Alta) やリオハ・アラベサ (Rioja Alavesa) といった地域で品質の高いワインが多く見られました。
リベラ・デル・ドゥエロ (Ribera del Duero): 全般的に良好なヴィンテージでした。テンプラニーリョは十分に成熟し、バランスの取れた赤ワインが生産されました。
プリオラート (Priorat): 同様に良好な年で、ガルナッチャ(グルナッシュ)とカリニェナ(カリニャン)から造られる赤ワインは、凝縮感とミネラル感が豊かなスタイルとなりました。
全体として、スペインの1970年は、品質の面で非常に成功したヴィンテージであり、特にリオハの赤ワインは注目に値します。
ドイツ
1970年のドイツは、全般的に非常に優れたヴィンテージと評価されています。特にリースリングから造られる晩収穫ワイン(シュペートレーゼ、アウスレーゼ)や甘口ワイン(ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ)は傑出した品質となりました。
生育期間を通して比較的良好な気候に恵まれ、ブドウは健全に成熟しました。収穫期には理想的な条件が整い、貴腐菌(エーデルファウレ)が良好に発生しました。モーゼル (Mosel)、ラインガウ (Rheingau)、ナーエ (Nahe)、ファルツ (Pfalz)、ラインヘッセン (Rheinhessen) といった主要地域で、ピュアな果実味、バランスの取れた酸、そして印象的なミネラル感を備えた、複雑でエレガントなリースリングが生産されました。特に甘口ワインは、凝縮感とフィネスを兼ね備え、長期熟成のポテンシャルに優れています。辛口ワインも全般的に良好な出来でした。
全体として、ドイツの1970年は、品質の面で特別なヴィンテージであり、特に甘口リースリングは注目に値します。
アメリカ
1970年のアメリカ、特にカリフォルニア州は、全般的に良好なヴィンテージでした。一部で課題はあったものの、品質の高いワインが生産されました。
カリフォルニア (California): 生育期間を通して比較的安定した気候だった地域が多く、ブドウは健全に成熟しました。
- ナパ・ヴァレー (Napa Valley): カベルネ・ソーヴィニヨンやその他の品種で品質の高いワインが生産されました。特にナパ・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは優れた出来と評価されており、構造がしっかりしており、熟成のポテンシャルも持っています。ボーリュー・ヴィンヤード (Beaulieu Vineyard)、ロバート・モンダヴィ・ワイナリー (Robert Mondavi Winery)、ハイツ・セラー (Heitz Cellar) といった生産者から注目すべきワインが生まれました。
- ソノマ・カウンティ (Sonoma County): 同様に良好なヴィンテージで、バランスの取れたワインが多く生産されました。
ワインは全般的にバランスが取れ、表現力豊かな果実味を持つものが見られました。
オレゴン (Oregon) / ワシントン (Washington): これらの地域についても、入手可能な情報は限られていますが、全般的には満足のいくヴィンテージだった地域もあった可能性があります。
オーストラリア
1970年のオーストラリアは、地域によってヴィンテージの出来にばらつきが見られましたが、全般的には満足のいくから良好な品質のワインが生産されました。
南オーストラリア (South Australia): バロッサ・ヴァレー (Barossa Valley) やその他の主要産地では、全般的に良好なヴィンテージでした。シラーズ (Shiraz) やカベルネ・ソーヴィニヨン (Cabernet Sauvignon) といった主要品種で、品質の高いワインが生産された地域もあります。ワインは全般的にバランスが取れ、表現力豊かな果実味を持つものが見られました。
西オーストラリア (Western Australia): 品質の高いワインが生産されたという報告も見られます。マーガレット・リヴァー (Margaret River) などの地域では、安定した気候条件が良質なワイン生産に貢献しました。
全体として、オーストラリアの1970年は、一貫して傑出しているというわけではありませんでしたが、多くの主要産地で満足のいくから良好な品質のワインが生産されたヴィンテージでした。