2009年のヴィンテージ作柄・出来・評価
ボルドー
2009年のボルドーは、記録的な暑さと乾燥に恵まれた、卓越したヴィンテージとして広く認識されています。生育期間を通して理想的な気候条件が続き、特に赤ワインにとって例外的な年となりました。冬は寒かったものの、春は暖かく乾燥しており、早期の開花を促しました。夏は非常に暑く乾燥していましたが、深刻な干ばつには至らず、ブドウの健全な生育と凝縮を促進しました。そして、収穫期には理想的な好天が続き、各品種が完璧に成熟し、優れた品質のブドウが豊富に収穫されました。
左岸
左岸のメドック地区は、この例外的なヴィンテージの恩恵を最大限に受けました。カベルネ・ソーヴィニヨンは見事に成熟し、ワインは深い色合いを持ち、力強く豊かな果実味、複雑なアロマ、そして柔らかく豊かなタンニンを備えています。凝縮感、構造、そしてバランスが例外的に高く、長期熟成のポテンシャルは極めて高いです。ポイヤック、サンテステフ、サン・ジュリアン、マルゴーといった主要地区の多くのシャトーで、卓越した赤ワインが生産されました。グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも、シャトー・オー・ブリオンやシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンをはじめとするシャトーが素晴らしい赤ワインと、品質の高い辛口白ワインを生産しました。辛口白ワインも、豊かで表現力のある特性を持つものが注目されています。
右岸
右岸のポムロールやサンテミリオンでも、メルローが全般的に卓越した出来となりました。暑く乾燥した夏がメルローにとって理想的に働き、豊かな果実味、柔らかな質感、そして複雑さを備えたワインが生まれました。サンテミリオンの石灰質台地や、ポムロールの優れたテロワールでは、力強く官能的なワインが生産されました。シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・オーゾンヌ(サンテミリオン)、シャトー・ペトリュス、シャトー・ラフルール(ポムロール)といったトップシャトーは、いずれも素晴らしいワインを生産し、右岸の輝きを示しました。右岸全体として、左岸と同様に例外的なヴィンテージでした。
ソーテルヌとバルサック
ソーテルヌおよびバルサックの甘口ワインにとっても、優れたヴィンテージとなりました。理想的な貴腐菌(ボトリティス・シネレア)の発生に必要な気候条件が整い、豊かなアロマ、複雑な風味、そしてバランスの取れた酸を持つ、卓越した品質の甘口ワインが広く生産されました。シャトー・ディケムをはじめとする多くのシャトーで、素晴らしい甘口ワインが生まれました。
ブルゴーニュ
2009年のブルゴーニュは、暑く乾燥した夏に恵まれた、全般的に非常に良好から優れたヴィンテージと評価されています。生育期間を通して比較的順調に進み、ブドウは健全に成熟しました。夏場の暑さが、ブドウの糖度と凝縮度を高めました。
ブルゴーニュ赤ワイン
赤ワイン(ピノ・ノワール)は、全般的に豊かで力強く、そして肉付きの良いスタイルとなりました。豊かな赤系果実や黒系果実の特性が際立ち、タンニンは熟しており、丸みを帯びた質感を持ちます。暑さの影響で酸は例年の冷涼なヴィンテージほど高くありませんが、バランスが取れています。比較的早くから楽しめる魅力がありますが、優れた畑のワインは熟成のポテンシャルも秘めています。コート・ド・ニュイでは、ジュヴレ・シャンベルタン、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュといった村名地区およびグラン・クリュ、プルミエ・クリュ畑で、表現力豊かで豊潤な赤ワインが生産されました。果実の凝縮感と骨格が特徴です。
コート・ド・ボーヌ
コート・ド・ボーヌの赤ワインも全般的に良好な出来でした。ポマール、ヴォルネイ、アロース・コルトンといった村々で、豊かで肉付きの良い赤ワインが見られます。バランスの取れた酸と果実味が特徴です。
ブルゴーニュ白ワイン
白ワイン(シャルドネ)は、全般的に豊かで表現力のある特性を持ちます。夏場の暑さにより酸は控えめですが、果実の成熟度が高く、より豊かな骨格で芳香豊かなスタイルとなりました。コート・ド・ボーヌの白ワイン産地であるムルソー、ピュリニー・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェでは、豊かで質感のある白ワインが生産されました。シャブリ地区も暑さの影響を受け、特徴的な引き締まった味わいやミネラル感は例年の冷涼なヴィンテージほど際立ちませんが、より豊かな骨格で表現力のある白ワインが生産されました。マコネ地区も全般的に良好な白ワインが見られました。全体として、ブルゴーニュの2009年は、温暖な気候を反映した、豊かで豊潤なスタイルのワインが生まれたヴィンテージと評価されています。
ローヌ
2009年のローヌ地方は、北部・南部ともに優れたヴィンテージとして広く評価されています。暑く乾燥した夏が理想的に働き、力強く凝縮感のあるワインが生産されました。
北部ローヌ
北部ローヌでは、主要品種であるシラーにとって卓越した年でした。暑く乾燥した夏により、ブドウは完璧に成熟し、凝縮感と複雑さ、そして力強い構造を持つ赤ワインが生産されました。エルミタージュ、コート・ロティ、クローズ・エルミタージュ、サン・ジョセフ、コルナスといった地区では、深い色合い、豊かな果実味、そしてしっかりとしたタンニンを備えた、長命で素晴らしい赤ワインが生産されました。ヴィオニエから造られるコンドリューなども優れた出来でした。
南部ローヌ
南部ローヌも全般的に優れたヴィンテージでした。グルナッシュを主体とする赤ワインは、暑く乾燥した夏の影響を受け、力強く豊かな果実味、複雑な風味、そして豊富なタンニンを備えた、豊かな骨格のスタイルとなりました。シャトーヌフ・デュ・パプでは、卓越した品質のワインが広く生産され、凝縮感と深みが注目されます。ジゴンダス、ヴァケイラス、タヴェルといった地区も全般的に品質が高く、力強いワインが多く見られました。全体として、ローヌの2009年は、北部・南部ともに品質が高く、力強く凝縮感のあるスタイルが特徴の、例外的なヴィンテージと評価されています。
ロワール
2009年のロワール地方は、全体として良好なヴィンテージと評価されています。特に赤ワインに注目すべきものが見られます。夏場は比較的温暖で乾燥しており、ブドウの成熟を助けました。
ソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランの産地であるサンセールやプイィ・フュメでは、全般的により豊かな骨格で、表現力のある果実味を持つ白ワインが生産されました。例年の引き締まったスタイルとは異なり、より丸みのある特性を持つものが多い傾向です。
シュナン・ブラン
シュナン・ブランの産地であるヴーヴレやモンルイ・シュール・ロワールでは、辛口、半辛口、甘口のいずれのスタイルも満足できる出来でした。夏場の温暖な気候が、特に甘口ワインの生産に有利に働いた地域もありました。
ロワール赤ワイン
カベルネ・フランを主体とする赤ワイン産地であるシノンやブルグイユでは、全般的に豊かで表現力のある赤系果実の特性を持ち、構造がしっかりしたワインが生産されました。タンニンは熟しており、バランスの取れた仕上がりです。ロワールの赤ワインとしては、比較的力強いスタイルと言えます。全体として、ロワールの2009年は、温暖な気候を反映した、より豊かなスタイルのワインが生産されたヴィンテージと評価されています。
アルザス
アルザスの2009年は、リースリング、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカなどの品種が豊かで表現力のある白ワインを生み出しました。夏の温暖な気候により、ブドウは完熟し、芳香豊かで骨格のしっかりしたワインが生産されました。酸と果実味のバランスは良好で、熟成のポテンシャルも高いワインが多く見られます。
シャンパーニュ
2009年のシャンパーニュは、暑く乾燥した夏に恵まれ、ブドウは十分に成熟しました。生まれたシャンパーニュは果実味が豊かで、バランスが良く、複雑さも兼ね備えています。特にピノ・ノワールは素晴らしい出来となり、力強さと優雅さを兼ね備えた印象的なシャンパーニュが生産されました。
イタリア
2009年のイタリアは、地域によってヴィンテージの評価に差が見られましたが、全般的に良好から優れた品質のワインが生産されました。暑く乾燥した夏が特徴でした。
北部イタリア
北部イタリアでは、ピエモンテ州は全般的に良好なヴィンテージでした。特にネッビオーロは、暑く乾燥した夏の恩恵を受け、凝縮感のあるワインが生産されました。バローロやバルバレスコは、力強く表現力豊かなスタイルとなり、長期熟成のポテンシャルを持つものも見られます。ヴェネト州なども概ね良好な出来でした。
中部イタリア
中部イタリアでは、トスカーナ州は全般的に優れたヴィンテージでした。キャンティ・クラシコやブルネッロ・ディ・モンタルチーノのサンジョヴェーゼは、暑く乾燥した夏に理想的に成熟し、豊かで複雑な、力強いワインが生産されました。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、特に品質が高く評価されており、長期熟成に優れています。
南イタリア
南イタリアも、地域によって状況は異なりますが、全般的には良好なヴィンテージでした。暑く乾燥した気候により、ブドウは健全に成熟し、力強く表現力のある果実味を持つワインが生産されました。全体として、イタリアの2009年は、温暖な気候を反映した、豊かで力強いワインが生産されたヴィンテージと評価されています。ラ・モッラ、モンフォルテ・ダルバ、セッラルンガ・ダルバ、バローロ、カスティリオーネ・ファッレット、モンタルチーノ、カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ、ガイオーレ・イン・キャンティ、ラッダ・イン・キャンティなどの村で特に高品質なワインが造られました。
スペイン
2009年のスペインは、全般的に優れたヴィンテージと評価されています。暑く乾燥した夏が理想的に働き、力強く凝縮感のあるワインが生産されました。
リオハ
リオハは、優れたヴィンテージでした。暑く乾燥した夏により、テンプラニーリョは理想的に成熟し、力強く構造のしっかりした、長期熟成に非常に適した赤ワインが生産されました。豊かな果実味と複雑なアロマを備え、凝縮感のある特性を示しています。リオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・バハの各地域で品質の高いワインが多く見られました。
リベラ・デル・ドゥエロ
リベラ・デル・ドゥエロも優れたヴィンテージでした。暑く乾燥した夏がテンプラニーリョ(ティント・フィノ)にとって理想的に働き、力強く凝縮感のある、長命なワインが生産されました。
プリオラート
プリオラートでも品質の高いヴィンテージでした。カリニェナやガルナッチャは、暑く乾燥した気候に適応し、凝縮感がありながらもバランスの取れたワインとなりました。ペニャフィエル、ラ・オルミガ、グラタリョフス、ポボレダなどの村や地区でも素晴らしいワインが生まれました。その他の地域でも品質は高く、全般的に優れたヴィンテージと評価されています。
ドイツ
2009年のドイツは、全般的に良好から非常に良好なヴィンテージと評価されています。暖かく乾燥した夏が特徴でした。
リースリング
リースリングは、温暖で乾燥した夏の影響を受け、全般的により豊かな骨格で、熟した果実味を持つスタイルとなりました。酸は例年の冷涼なヴィンテージほど高くありませんが、バランスが取れています。モーゼル、ラインガウ、ナーエ、ファルツ、ラインヘッセンといった主要地域で、表現力豊かなリースリングが生産されました。遅摘みワイン(シュペートレーゼ、アウスレーゼ)は品質が高く、複雑さと凝縮感を備えています。極甘口ワイン(ベーレンアウスレーゼ、トロッケンベーレンアウスレーゼ)も生産され、品質の高いものが見られます。ベルンカステル、ピースポート、ヴェーレン、ヨハニスベルク、ルーデスハイム、デイデスハイムなどの村が主要産地です。
ドイツ総評
全体として、ドイツの2009年は、温暖な気候を反映した、より豊かな骨格のワインが生産されたヴィンテージと評価されています。
アメリカ
2009年のアメリカ、特にカリフォルニア州は、一部で干ばつが懸念されましたが、全体的には優れたヴィンテージでした。生育期間を通して温暖で乾燥した気候が続き、ブドウは健全に、そして理想的に成熟しました。
カリフォルニア
カリフォルニア州では、乾燥した気候がブドウの病害リスクを低減し、健全な成熟を促しました。収穫は例年よりも早めに始まりました。ナパ・ヴァレーやソノマ・カウンティといった主要地域では、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネといった主要品種がいずれも品質の高いものとなりました。特に赤ワインは、凝縮感がありながらもバランスが取れ構造のしっかりした、長命なワインが生産されました。ナパ・ヴァレーでは、オークヴィル、ラザフォード、セント・ヘレナ、カリストガなど、ソノマ・カウンティでは、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ソノマ・コースト、アレクサンダー・ヴァレーなどで卓越したワインが見られました。セントラルコーストやその他の地域も全般的に良好な出来でした。
オレゴン・ワシントン
オレゴン州やワシントン州も成功したヴィンテージでした。オレゴン州のピノ・ノワールやシャルドネは、表現力豊かでバランスの取れたワインが生産されました。ワシントン州でも、温暖で乾燥した気候により、品質の高い赤ワインが生産されました。全体として、アメリカの2009年は、品質が高く、豊富な収穫量にも恵まれた、優れたヴィンテージと評価されています。
オーストラリア
2009年のオーストラリアは、地域によってヴィンテージの出来にばらつきが見られましたが、全般的に良好な品質のワインが生産されました。
南オーストラリア
南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーやマクラーレン・ヴェール、クナワラといった地域では、全般的に良好なヴィンテージでした。シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンは、凝縮感がありながらもバランスの取れたワインが生産されました。ヴィクトリア州やニューサウスウェールズ州の一部地域では、夏の干ばつや熱波の影響を受け、品質に差が出た地域も見られます。しかし、全体として、オーストラリアの2009年は、地域によって品質に差が見られましたが、多くの主要産地で品質の高いワインが生産された、成功したヴィンテージと評価されています。
西オーストラリア
西オーストラリア州のマーガレット・リヴァーも良好なヴィンテージでした。カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネは、バランスが良く、エレガントなワインが生産され、特に白ワインはフレッシュさと複雑さを兼ね備えています。