アマローネという至福の酒|1968年 ベルターニ、2本入荷

1968年 ベルターニのレチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ・アマローネ・クラッシコ・スペリオーレが2本、セラーに入荷しました。750ml、赤ワインです。液面はイン・ネック(ネック内)、ラベル・キャップシールともに良好で、酒井の見立ては「コンディションはパーフェクト」です。コルクは未確認です。
アマローネとは何か
アマローネは、イタリア北東部ヴェネト州、ヴェローナの北に広がるヴァルポリチェッラ地区でだけ造られる赤ワインです。最大の特徴は「干し葡萄から辛口に醸す」こと。秋に摘んだコルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラの房を、フルッタイオと呼ばれる乾燥室の棚に広げ、およそ100〜120日、冬まで陰干しします。房は水分を失って重さが3〜4割減り、糖分と果皮の成分が凝縮したところで、12月に入ってからようやく圧搾と発酵に進みます。生産規定では、乾燥後の潜在アルコールが14%以上であること、最低2年(リゼルヴァは4年)の熟成を経ることが求められます。通常の赤ワインより多くの葡萄と、はるかに長い時間を費やす。その贅沢さが、この酒の値段と重みを決めています。
「アマローネ」の名は「アマーロ(苦い)」の強調形で、1936年に造り手アデリーノ・ルッケーゼが名付けたと伝わります。同じ干し葡萄から甘口の「レチョート」を造っていたところ、発酵が最後まで進んで辛口になった樽が生まれ、それを「アマーロではなく、アマローネだ」と呼んだのが始まりです。「アマローネ」の名で売られ始めたのは1953年以降。1968年にヴァルポリチェッラがDOCに認定されてこの様式が公式に認められ、1990年にアマローネ単独のDOC、2010年にはイタリア最高格付けのDOCGへ昇格しました。

イタリアでの価値と評価
イタリア国内でアマローネは、食事に合わせるというより食後にゆっくり味わう「瞑想のワイン(ヴィーノ・ダ・メディタツィオーネ)」の代表格とされ、地元の生産者組合はこれを「ヴァルポリチェッラの王」と呼びます。生産量はレチョートと合わせて年間およそ1,360万本(2025年)。ヴァルポリチェッラ全体5,750万本の4分の1にも満たない本数で、この地区の出荷額のほぼ半分を稼ぎ出しています。国内市場は売上の約4割を占め、近年はレストランでの需要に支えられて値を上げてきました。毎年冬にはヴェローナで新ヴィンテージを一斉に披露する試飲会「アマローネ・オペラ・プリマ」が開かれ、2026年で22回を数えます。ベルターニのアマローネ・クラッシコ2015が、ジェームズ・サックリングの2024年イタリア年間最高ワインに選ばれたのも、この酒がイタリアの中でどう見られているかを物語っています。

この1968年について
ベルターニは1857年創業、ヴェローナで最も古いワイナリーの一つで、アマローネという名が定着する以前からこの酒を造ってきた先駆者です。今回の1本のラベルには、当時の正式呼称「レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ・アマローネ・クラッシコ・スペリオーレ」と、ヴェンデミア(収穫)1968の文字。60ヘクトリットルのスラヴォニア産オークの大樽で16年眠り、瓶詰めは1984年11月とされます。1968年は同社の公式資料が4つ星の良好年に格付けする年。収穫から58年を経たアマローネが2本そろって入ることは、そう多くありません。
コンディションは2026年9月19日、酒井が確認しました。
ご興味のある方は、在庫状況とあわせてお気軽にお問い合わせください。
ヴィンテージと生産者のいま
ベルターニの公式資料によれば、1968年は生育期を通じて良好に推移し、9月も乾燥に恵まれたことから4つ星(良好年)に格付けされています。
ベルターニは近年も評価を高めており、2015年のアマローネ・クラッシコがジェームス・サックリング誌の『2024年イタリア年間最高評価』に選出されたと報じられています。また本拠グレッツァーナのセラーは大規模改装を経て2024年5月に一般公開を再開しています。
レチョート デッラ ヴァルポリチェッラ アマローネ クラッシコ スペリオーレ 1968 を知る専門店の解説 ・ 3,058字
1968年ヴィンテージ
1968年のヴァルポリチェッラは、ベルターニの公式資料が「生育期は良好で、9月は乾燥」と記し、4つ星の良好年に位置づけるヴィンテージです[4]。アマローネにとって収穫期の乾いた空気は決定的な意味を持ちます。摘み取った房を数か月にわたり陰干しする「アパッシメント」は、健全で果皮の厚い葡萄があって初めて成立する工程だからです。さらに1968年は、ヴァルポリチェッラがDOCに認定され、アマローネというスタイルが公式に認知された記念すべき年でもあります[7]。このボトルがDOC制定当初の呼称「レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ・アマローネ」を掲げているのは、その出発点をそのまま封じ込めた証といえます。60ヘクトリットルのスラヴォニア産オークの大樽で長い眠りを経たのち、瓶詰めされたのは1984年11月とされます[6]。収穫から瓶詰めまで16年の歳月を経た、悠然たる時間の産物です。
レチョート デッラ ヴァルポリチェッラ アマローネ クラッシコ スペリオーレ
正式名称は Bertani(ベルターニ)。本拠はヴェローナ県グレッツァーナ、ヴァルパンテーナ地区に置かれています[8]。1857年にガエターノとジョヴァン・バッティスタのベルターニ兄弟が創業したとされ、ヴェローナで最も古い歴史を持つワイナリーの一つに数えられます。自社ブランド「Amarone della Valpolicella Classico」の初ヴィンテージは1959年で[8]、アマローネという様式が名を得る以前からこの酒を世に問うてきた先駆者です。本品の1968年はDOC制定と同じ年にあたり、ラベルの呼称は制定当初の様式を留めていますが、今日の格付けで言えば同地区最高峰のアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ(現DOCG)に相当します。近隣にはジュゼッペ・クインタレッリ、ロマーノ・ダル・フォルノ、アレグリーニといった名手が軒を連ねる土地です。
ヴァルポリチェッラ・クラッシカは、ヴェローナ北西、レッシーニ山地の南麓に広がる丘陵地帯で、フマーネ、マラーノ、ネグラール、サン・ピエトロ・イン・カリアーノ、サンタンブロージョの5つのコムーネからなる歴史的中心区域です。石灰質の堆積土と玄武岩を主体とする火山性土壌が谷ごとに入れ替わり、ガルダ湖から吹き込む穏やかな風と山からの冷気が昼夜の寒暖差を生みます。アマローネはこの地で摘んだ房を冬まで陰干しし、干し葡萄から辛口に醸すという、他に類を見ない製法の赤ワインです。代表的な造り手としては、伝説的な職人クインタレッリ、超凝縮型の旗手ダル・フォルノ、単一畑思想を牽引したアレグリーニ、現代アマローネの普及に寄与したマァジ、そしてトンマージ、スペーリ、テデスキといった家族経営の名門が挙げられます。
ベルターニは1957年、ヴァルポリチェッラ・クラッシカの名門テヌータ・ノヴァーレ(500エーカー超)を取得し、以後この畑をアマローネ生産の中核に据えました[9]。本品が生まれた1968年当時は、創業家ベルターニ家が経営の舵を握っていた時代です。その後2011年12月、トスカーナのアンジェリーニ・グループがベルターニ家株式の70%を取得して経営権を掌握し、家族経営から企業経営へと移行しました[10]。2012年9月の資産分割完了後、ベルターニ家(ガエターノ氏と息子2人)は新会社を設立して独立し(現テヌータ・サンタ・マリア・ディ・ガエターノ・ベルターニ)、ブランド「Bertani」の商業生産はアンジェリーニ側(現 Angelini Wines & Estates)に残されました[11]。近年の動向としては、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ2015がジェームズ・サックリングの「2024年ワイン・オブ・ザ・イヤー」(イタリア年間最高評価)に選出され[1]、2024年5月には本拠グレッツァーナのセラーが400㎡超のホスピタリティ空間を備えて一般公開を再開するなど[3]、老舗が新たな章に入ったことを示しています。一方、醸造を率いたCOOアンドレア・ロナルディ氏は2024年3月に退任し、同年5月にマリリーザ・アレグリーニのワイナリーグループのCEOに就任しました[2]。
現在のベルターニは、ガルダ湖畔、ヴァルパンテーナ、ソアーヴェ、ヴァルポリチェッラ・クラッシコとヴェローナ全域に200ヘクタール超の畑を保有しています[12]。アマローネはコルヴィーナ・ヴェロネーゼ約80%、ロンディネッラ約20%で構成され、房の上位30%のみを選果して陰干しに回すという厳格な選別が特徴です[13]。ノヴァーレの畑は石灰質土壌と斜面の日照に恵まれ、コルヴィーナに厚い果皮と酸の骨格を与えます。アマローネの下に連なる銘柄としては、ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・スペリオーレやリパッソ、そして19世紀から続く歴史的なラベル「セッコ・ベルターニ」が同家の裾野を支える存在とされています。
醸造哲学は一貫して「大樽による長期熟成」です。アマローネ・クラッシコは大型のスラヴォニア産オーク樽で長い年月を過ごし、小樽の新樽香に頼らず、緩やかな酸化熟成によって香りの層を積み上げていきます。近年、一時期取り入れたバリックからロナルディ氏の下で再び大樽中心の様式に回帰したことは、この家の本質がどこにあるかを物語っています[14]。1968年についても60ヘクトリットルの大樽で熟成され、瓶詰めは1984年11月とされます[6]。格付けの上では、1968年のDOC制定でアマローネの様式が公式化され、2010年にはイタリア最高格付けのDOCGに昇格しました[15]。本品はその出発点に立つ一本であり、ベルターニがDOC以前から積み上げてきた様式の原型を、今に伝える貴重なボトルです。
味わいの特徴
現行のアマローネはコルヴィーナ・ヴェロネーゼ約80%、ロンディネッラ約20%で構成されています[13]。若い頃は陰干しに由来する干し無花果やドライチェリー、ブラックベリーの凝縮した果実に、ココアと甘いスパイスが重なる、濃密で力強い味わいであったと考えられます。58年の熟成を経た現在は、果実がドライフルーツやプルーンのような深みへと沈み、乾いた薔薇、白檀、シナモンやクローブといった温かみのあるスパイス、なめし革、トリュフ、紅茶、枯葉、葉巻の余韻が幾重にも立ち上ることが期待されます[5]。評論家ニック・ジャクソンが指摘する「ベルベットのような質感」は、大樽での長期熟成を経てタンニンが完全に溶け込み、絹のように滑らかになっていることを示唆します。飲む1〜2時間前に静かに抜栓し、澱を除く目的で軽くデキャンタに移し、16〜18℃で少しずつ開いていく様を追うのが最良の楽しみ方でしょう。
1968年という時代
1968年、日本では川端康成が日本人として初めてノーベル文学賞を受賞し、小笠原諸島が本土に復帰、年末には東京・府中で三億円事件が起きました。世界に目を向ければ、アポロ8号が人類初の月周回飛行を成し遂げ、プラハの春とその挫折が東欧を揺るがし、メキシコシティでオリンピックが開催された年でもあります。この年に生まれた方は2026年に58歳を迎えられます。生まれ年のワインとして、あるいは半世紀を越えた節目を祝う一本として、同じ時間を生きてきたボトルには言葉を超えた重みが宿ります。ヴェローナの丘で干され、大樽の闇で長い年月を眠り、ガラスの中でさらに40年余りを過ごしたこの液体は、1968年という一年そのものを静かに湛えています。



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| 銘柄/ヴィンテージ | レチョート デッラ ヴァルポリチェッラ アマローネ クラッシコ スペリオーレ 1968(Recioto della Valpolicella Amarone Classico Superiore) |
|---|---|
| 商品コード | 5000001 |
| 容量 | 750ML |
| 液面 | イン・ネック(ネック内) |
| ラベル状態 | 良好 |
| キャップシール | 良好 |
| 確認者/確認日 | 酒井/2026-09-19 |




